| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-343  (Poster presentation)

毒源が変われば形態も変わる?―食性の異なるヤマカガシ属における頭部形態の変化 【B】
A comparative study in the source of steroidal toxins and relative head dimensions in the genus Rhabdophis. 【B】

*福田将矢(京都大学), Jing-Song SHI(Shenyang Norm. Univ.), Alan H. SAVITZKY(Utah State Univ.), Qin CHEN(Chengdu Inst. Biol.), 森哲(京都大学)
*Masaya FUKUDA(Kyoto Univ.), Jing-Song SHI(Shenyang Norm. Univ.), Alan H. SAVITZKY(Utah State Univ.), Qin CHEN(Chengdu Inst. Biol.), Akira MORI(Kyoto Univ.)

東アジアに生息するヤマカガシ属ヘビ類の多くの種はヒキガエルを摂食し、頸腺という器官に餌由来の毒を溜め込む。近年の研究により、ヤマカガシ属の中で主食がカエルからミミズへと変遷し、またミミズ食の一部の種において、毒源がヒキガエルからホタル幼虫へと変遷したことが明らかとなった。
ヘビ類は手足を持たないことから、多くの種において特定の餌の捕食に適応した頭部形態を持つことが知られている。このことから、ミミズへと主食を変化させた一部のヤマカガシ属では、ヒキガエルよりもサイズが小さく、ミミズと似た形態のホタル幼虫を毒源として利用する方が採餌効率の面で有利だった可能性が考えられる。
そこで本研究では、カエル+ヒキガエル食のヤマカガシ、ミミズ+ヒキガエル食のミゾクビヤマカガシ、ミミズ+ホタル食のチフンヤマカガシを対象として形態解析を行い、①ヤマカガシ属の中でどのような頭部形態の変化が起こったのか、②その形態の違いがより小さいサイズの餌を食べるよう適応した結果なのか、について考察する。
CTスキャンを用いて顎の可動性に関わる形質を抜き出し、主成分分析により形態比較を行った結果、カエル食のヤマカガシはミミズ食の2種と比べ頭の大きさが有意に大きいこと、またミミズ食の2種において、ホタル食のチフンの方形骨の長さがヒキガエル食のミゾクビに比べ有意に短いことが明らかとなった。次に顎の可動性の違いによる摂食効率の違いを比較するため、ミゾクビ、チフンに様々なサイズのミミズを給餌する実験を行ったが、両者の摂食効率には大きな違いは見られなかった。
研究の結果、主食の変化に伴う頭サイズの縮小化、また毒源の変化に伴う顎の可動性の縮小化といった頭部形態の変化が観察されたものの、これらの形態の違いは摂食効率には直接関わらないことが示唆された。餌の探索効率など、別の要因に関わる可能性が考えられる。


日本生態学会