| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-347  (Poster presentation)

佐渡島と本州間におけるニホンイタチの形態と食性の比較
Comparisons of morphology and  diet composition of Japanese weasels between Sado Island and mainland Honshu.

*木嶋健志, 阿部晴恵, 岡久佳奈(新潟大学)
*Kenshi KIJIMA, Harue ABE, Kana OKAHISA(Niigata university)

ニホンイタチ(Mustela itatsi)は本州以南の広域に分布する日本固有種である。平野部から山間部まで様々な環境に適応できるニホンイタチは、島嶼環境にも適応している。例えば屋久島や種子島に生息するコイタチ(M. i. sho)は亜種として区別されることがある。本研究では日本海側に位置する佐渡島のニホンイタチを対象にした。向野ら(未発表)の予備的な分子系統解析から、佐渡島のニホンイタチ集団は本州集団と遺伝的に分化していることが確認されたため、佐渡島の集団も佐渡島という島嶼環境に適応し、形態に変異が起こっている可能性がある。このため、食性に関連する下顎や餌のハンティングに用いられる四肢に着目して、本州のイタチと形態比較を行った。さらに本州と佐渡島集団での食性比較を行うことで、形態と食性の関係も考察した。形態比較としてニホンイタチの骨格標本を利用し、佐渡、新潟、石川、愛知、南大東島個体を計測した。食性分析に関しては佐渡島のイタチの糞を8月を除く6〜11月に採取し、本州のイタチの食性は既存の論文のデータを用いて比較した。形態比較の結果、本州集団に比べて佐渡島のニホンイタチは下顎骨が長く、大腿骨の幅が小さい傾向が見えた。また、頭部の大きさは佐渡島内の個体でもばらつきが大きく、佐渡島内のなかで局所集団が存在する可能性が考えられた。体サイズに関しては、佐渡島を含む日本海側の地域では差がなく、太平洋側である愛知のみ大きい傾向であった。食性分析では本州のイタチに比べて佐渡島のイタチは昆虫類を多く摂食しており、甲殻類や魚類の摂食頻度が低かった。佐渡島のイタチは下顎の長さから比較的大きな餌を捕食し、大腿骨の幅が小さいことはハンティングコストかからない昆虫を捕食する機会が多いためと考えられた。


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