| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-369  (Poster presentation)

胚発生・化石記録の統合解析による翼手類の反響定位の進化的起源の解明 【B】
Integrated paleontological and embryological data shed light on evolutionary origins of laryngeal echolocation in bats 【B】

*Taro NOJIRI(The Univ. of Tokyo), Laura A.B. WILSON(The Australian National Univ.), Camilo LOPEZ-AGUIRRE(The Univ. of Toronto), VUONGTan Tu(VAST), Dai FUKUI(The Univ. of Tokyo), 遠藤秀紀(東京大), Daisuke KOYABU(Univ. of Tsukuba, Tokyo Medical and Dental Univ.)
*Taro NOJIRI(The Univ. of Tokyo), Laura A.B. WILSON(The Australian National Univ.), Camilo LOPEZ-AGUIRRE(The Univ. of Toronto), Tu Tan VUONG(VAST), Dai FUKUI(The Univ. of Tokyo), Hideki ENDO(The Univ. of Tokyo), Daisuke KOYABU(Univ. of Tsukuba, Tokyo Medical and Dental Univ.)

現生コウモリ類はヤンゴキロプテラ類とキクガシラコウモリ類,オオコウモリ類の三群に分けられる.このうち前二者は喉頭で生成した超音波を対象に当て対象の位置や形状情報を取得する,いわゆる喉頭エコーロケーションを行う.この二者には蝸牛の肥大化や, 鼓室輪と茎状舌骨の骨質連結といった特徴的な形質が見られる.が,オオコウモリ類ではこうした形質はみられない. 喉頭エコーロケーションを行なう二者は分子系統学的には単系統ではないため,喉頭エコーロケーションはコウモリ類の共通祖先で生じてオオコウモリ類で二次的に失われたのか,あるいは三群の分岐以降にヤンゴキロプテラ類とキクガシラコウモリ類とで独立に生じたのか,これまで論争が続いてきた.この問題の解決を目指して,我々は喉頭エコーロケーション関連形質の発生過程に着目し,同三群と地上棲哺乳類でその発生過程の共通性と相違を検討した.その結果, オオコウモリ類と地上棲哺乳類における喉頭エコーロケーション関連形質の発生過程に相違がないこと,そしてヤンゴキロプテラ類とキクガシラコウモリ類とでは喉頭エコーロケーション関連形質の成体での最終的な表現型は類似しているものの,その発生は異時的かつ異所的に異なることが判明した.この結果は, 喉頭エコーロケーション形質がオオコウモリ類で失われたのではなく, ヤンゴキロプテラ類とキクガシラコウモリ類とで独立に進化したというシナリオをより支持する. これに加えて, これまで報告されている中で最古の化石コウモリであるオニコニクテリスの茎状舌骨の形態解析を行った結果, オオコウモリ類に共通の形質が複数みられた. これにより, コウモリ類はまず自由飛行を進化させ, その後ヤンゴキロプテラ類とキクガシラコウモリ類でエコーロケーションが収斂進化したことが示唆された. 本研究により, 「飛行が先か超音波が先か」というコウモリの進化史における長年の謎が解明された.


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