| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-374  (Poster presentation)

シロオビアゲハ擬態型雌における 翅形状模倣の可能性
The wing shape mimicry in mimic type females of Papilio polytes

*鈴木智大(鹿児島大学)
*Tomohiro SUZUKI(Kagoshima Univ.)

ベイツ型擬態は毒などの防御手段を持たない生物が毒などを持つ生物の警告信号を模倣する現象で、自然選択の古典的証拠とされる(Bates,1862)。
奄美以南の日本から東南アジアにかけて広く分布するアゲハチョウ科のシロオビアゲハPapilio polytesのメスには、毒蝶のベニモンアゲハに似た翅模様を持つ擬態型とオスと同じ翅模様の非擬態型という多型が存在する。一般に、視覚的模倣信号は、色や模様だけでなく、身体構造や行動も含み、これらは統合された模倣表現型を達成するために協調して機能することが多い(Wickler, 1968)。本講演では、シロオビアゲハの擬態型メスがベニモンアゲハの翅の模様だけではなく形状も模倣している可能性を検討した。擬態型メスの翅の形状を通常型と比較したところ、擬態型メスと非擬態型メスの間で前翅、後翅ともに形状が有意に異なっており、擬態型のほうがベニモンアゲハの形状に近いことが示唆された。さらに擬態型メスの後翅の形状の個体変異の遺伝率を推定し、形状の進化可能性について考察した。


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