| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-385  (Poster presentation)

トビムシ形態分類と個体数計量に対する深層学習の適用 【B】
Application of deep learning to morphological classification and abundance measurement of soil insect, Collembola 【B】

*𠮷川稜(福知山公立大学), 吉村正志(OIST), 小笠原昌子(OIST), 池野英利(福知山公立大学)
*Ryo YOSHIKAWA(The University of Fukuchiyama), Masashi YOSHIMURA(OIST), Masako OGASAWARA(OIST), Hidetoshi IKENO(The University of Fukuchiyama)

世界中の土壌に数多く存在するトビムシは土壌環境の指標動物として優れており、土壌中にいるトビムシの種数や個体数が土壌環境変化のインデックスとして使用されている。しかしながら、トビムシの分類、個体数のカウントは、多くの場合、専門家が手動で行っており、多大な労力と時間を要している。この問題に対して、近年、画像処理技術やAI技術を活用した自動カウンティングシステムの研究、開発が進められているが、形態に基づく種分類及び個体数のカウントを自動的に行う方法については、未だ実用レベルに達していない。このことから、本研究では、CNN(Convolutional Neural Network)に基づいた物体検出手法YOLO(You Only Look Once)を用いて、トビムシの形態種分類及び個体数の自動カウントを行うシステムの開発を進めた。YOLOは、画像における物体検出に広く使用されており、バージョンが更新されるごとにその性能も向上している。本研究では、最新モデルであるversion5を使用し、トビムシの形態的特徴に基づいた6つの形態種クラスを学習させ、最も高い精度が得られたモデルパラメータ値により検証を行った。捕獲器で取得されたトビムシを撮影専用容器に入れて撮影したスキャナ画像を処理した結果、背景やゴミとトビムシを上手く分離することができ、ヒトが分類した形態種と同様の種分類を行っていることを確認した。また、個体の総数、及び、画像に多く含まれる形態種についてカウントした個体数は、ヒトがカウントした正解値との相対誤差が20%以内であった。形態種分類、個体数カウント処理においては、元画像を分割する必要があり、分割時に境界で分断されたトビムシを二重にカウントしたこと、また、1個体が複数の形態種クラスに分類し、複数回カウントしたことで誤差が生じており、これらの誤差解消が今後の課題である。


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