| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-410  (Poster presentation)

集水域の水収支と熱収支計算に基づき、両生類の生息地の適応度の簡易指標を求める
Generating proxy of habitat suitability for terrestrial amphibians based on heat and water budjet within a given watershed

*勢井慎太郎, 柗島野枝, 長谷川雅美(東邦大学)
*Sei SHINTARO, Noe MATSUSHIMA, Masami HASEGAWA(Toho Univ.)

外温性脊椎動物である両生類では、周囲の温度と湿度が生存に影響する。また、地表面の温度・湿度環境は地表面の熱収支及び水収支に左右されている。そのため、両生類の広域的な減少の要因として、開発や土地利用の変化に伴う生息地の縮小・消失に加え、土地利用の変化によって地表面の熱収支や水収支が変化し、生息地の高温化や乾燥化が進むことが減少要因である可能性が議論されている。しかし、景観スケールでの両生類の分布と生息環境との関係は、主に気候や土地利用を対象としており、両生類の生存に直接関係する温度や湿度との関係は主に局所的なスケールでしか調べられていない。そこで、本研究では、景観スケールでの乾燥化及び高温化と両生類の分布との関係を解明することを目的とした。本研究では乾燥化と高温化の指標として、集水域ごとの地表面の保水量と熱負荷量を算出し、これらと両生類の分布との関係を解析した。
本研究では千葉県全域を対象とした大スケールの集水域と、特定の集水域を構成する小スケールの集水域を作成した。また、各集水域において水収支式から地下浸透量を保水量に、熱収支式から顕熱輸送量を熱負荷量として定義し、流出係数に基づいて分類した土地被覆に応じて算出した。千葉県の両生類13種の調査記録をもとに整備した各集水域での各種の在不在データと保水量及び熱負荷量の関係についてロジスティック回帰モデルを構築した。これらの回帰モデルの偏回帰係数から保水量及び熱負荷量が分布に影響を与える大きさを求めた。また、各種が50%の存在確率を示す場合の保水量・熱負荷量を求め、景観スケールでの生息地の簡易指標として検討した。
本研究の手法は、景観スケールでの水分量・熱負荷量を容易に算出することが可能であり、他の様々な分類群でも応用可能であると考えられる。


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