| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-436  (Poster presentation)

越後平野における大型水禽類4種の生息に必要な生態系ネットワーク
Ecological network to ensure habitat for four large waterfowls in the Echigo Plain

*伊藤玲駆(新潟大学・院・自然), 向井喜果(新潟大学・院・自然), 布野隆之(人と自然の博物館), 関島恒夫(新潟大学・農)
*Reiku ITO(Grad.Sch.Sci.Niigata Univ.), Haruka MUKAI(Grad.Sch.Sci.Niigata Univ.), Takayuki FUNO(Mus.of Nature and Human Act.), Tsuneo SEKIJIMA(Niigata Univ.Agri.)

 生物が生活史を全うする上で、また、集団の遺伝的多様性を保つ上で、生息に必要なエリアを保全するだけでなく、生息地間を有機的に連結させる「生態系ネットワーク」の重要性が指摘されている。
 国土交通省は、これまで河川内の自然環境整備を主とした「多自然型川づくり」を実施してきたが、河川と周辺環境の連結性に対する配慮への声の高まりを受け、現在、河川内から流域スケールへと発展させた「河川を基軸とした生態系ネットワーク」の形成事業を広く展開している。これまで、全国15か所の流域で上記事業が推進されており、越後平野も国内10番目の候補地として選定された。越後平野は、潟や湖沼および水田が一体となった優れた水辺環境を有しており、毎年、多数のガン・ハクチョウ類が越冬するとともに、これまでもトキの飛来が記録されており、将来的にトキの分散地としての役割が期待されている。そのため、現在、ガン・ハクチョウ類およびトキを指標種とした生態系ネットワークの形成事業が進められている。本研究では、大型水禽類のマガン、オオヒシクイ、コハクチョウ、オオハクチョウ4種を対象とし、それらの生息が保証される生態系ネットワークを”見える化”することを目的とした。まず、上記4種の越冬地となっている福島潟およびその周辺水田を対象地域とし、2008年から2017年の間に取得された4種の採餌群の位置情報を応答変数に、環境要因を説明変数として、MaxEnt解析を用いて、生息適地モデルを作成した。その後、作成したモデルを越後平野に広く外挿することにより、4種の潜在的生息適地マップを作成した。次に、生態系ネットワーク形成に必要な優先的保全地域を選定するために、相補性解析を用いて4種の保全、シナリオに基づくエリア抽出を行った。本公演では、上記結果をもとに検討した、越後平野における大型水禽類4種の生息に必要な生態系ネットワーク形成案を提案する。


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