| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-437  (Poster presentation)

COVID-19パンデミック前後での大都市住民の緑地利用と健康度の関係
Relationship between the use of green space and health of large city residents before and after the COVID-19 pandemic.

*髙野優, 冨高まほろ, 佐々木雄大(横浜国立大学)
*Yu TAKANO, Mahoro TOMITAKA, Takehiro SASAKI(Yokohama National Univ.)

都市住民にとって、都市緑地は生態系サービスの貴重な供給源の1つである。都市に住んでいる人の割合は世界的に増加し続けており、都市緑地の役割は重要視されている。現在、世界中でCOVID-19 が流行しており、人々の健康が脅かされている。WHOによって健康とは「身体的・社会的・精神的に完全に良い状態であること」と定義されている。COVID-19は人々に咳や発熱など直接的な症状以外にも、様々な面での健康危機をもたらしている。例えば、外出の制限による身体的活動の減少(身体的)や人との関わりが減ることでの孤独感(社会的)、また感染症蔓延への不安感(精神的)などが挙げられる。都市緑地はレクリエーションや人とのコミュニケーションの場、また景観などによる癒やし効果など多様な利益を提供する。さらに感染対策をした上で外に出る機会も提供し、全体的な健康を向上させる可能性がある。また、都市緑地は学校や公園など様々なタイプがあり、それぞれ特徴も異なる。したがって、健康への寄与も一様ではないと考えられる。本研究では、東京23区居住者を対象にオンラインアンケート調査を行い、どのような都市緑地への訪問が COVID-19 パンデミック前後で大都市住民の主観的健康度を左右するかを明らかにした。主観的健康度はWHOが開発した全体的な健康度を測定するための指標である。結果、パンデミック時において、健康度に影響を与える都市緑地タイプが明らかになった。道路脇の緑地は家族や友達との密接な関係に、寺社周囲の緑地は社会的な関わりに寄与することが示された。また、地区公園に訪問する人ほど、パンデミックによって周囲からの支援を感じにくくなっていることも分かった。平常時(パンデミック前)に健康度に影響を与える都市緑地タイプと、パンデミック前後での健康度の変化に影響を与える緑地タイプは必ずしも一致しないことが明らかになった。


日本生態学会