| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-467  (Poster presentation)

落葉広葉樹林における異なる空間スケールでのシカ密度指標と林床植生の関係 【B】
Deer density indicators on spatial scales associated with field layer vegetation in the broad-leaved forest 【B】

*鴻村創, 内藤和明(兵庫県立大・地域資源)
*Hajime KOMURA, Kazuaki NAITOU(RRM, Univ. Hyogo)

近年、ニホンジカ(以下、シカ)の個体数増加と分布拡大による自然植生の衰退が全国的に問題となっている。兵庫県では植生の衰退について県域スケールでモニタリングが行われており、シカの生息個体数の推定とともに広域での研究が進められている。しかし、シカによる森林の利用頻度は周囲の景観などによって局所的に異なることが予想され、植生への影響も異なると考えられる。そこで、本研究では調査スケールの違いによってシカの密度指標と植生の関係が異なるのかを明らかにするため、スケールの異なる2種類のシカの密度指標についてそれぞれのシカの密度指標と植生の関係を調べた。
豊岡盆地の中央を流れる円山川の東西にそれぞれ5か所(内2か所は防鹿柵設置)、計10か所の落葉広葉樹林を選定し、自動撮影カメラによるシカの利用頻度調査と植生調査を行った。植生調査は10m×10mのプロットを設置し各階層の高さと植被率(%)を記録し、階層ごとに植物種と被度(%)を記録した。さらに内部に2m×2mのサブプロットを設定して出現種と木本実生の個体数を記録した。植生保護柵が設置されている調査地では柵の内側と外側でそれぞれ同様の調査を行った。シカの密度指標は5kmメッシュ単位で収集されているシカ目撃効率(SPUE)とより小さいスケールの密度指標として自動撮影カメラの画像から算出されたシカ撮影頻度(RAI)を用いた。
植生調査の結果、下層植生において円山川の東西で違いが見られた。SPUEの時系列変化から、この違いはシカの個体群密度の履歴が反映されている可能性が高いと考えられた。RAIは調査地によって大きく異なっており、調査地周辺の景観の違いが要因の一つと考えられた。また、こうしたシカの利用頻度の局所的な違いによって、狭い範囲で植生の衰退度に違いが生じる可能性が示唆された。どちらのシカの密度指標も植生の衰退度との関係が見られたが、調査スケールによって異なる特徴を示すことが示唆された。


日本生態学会