| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-009  (Poster presentation)

市町村データを活用したアライグマの捕獲数に影響する環境要因の分析
Environmental factors for captured number of introduced raccoons based on municipality records

*山口沙耶, 上野真由美(北海道立総合研究機構)
*Saya YAMAGUCHI, Mayumi UENO(Hokkaido Research Organization)

特定外来生物アライグマは、日本各地で生態系被害や農作物などへの被害をもたらしており、北海道を含めて対策が急がれている。一方で、実際に捕獲を行う従事者は農家や市町村担当者などであり、捕獲努力量を向上させるのは容易ではなく、効率的な捕獲が望まれる。そこで本研究では、捕獲適地の選定に向けて、アライグマの捕獲数に影響する環境要因について検討することを目的とした。
北海道内でもアライグマによる農業等被害額・捕獲数が最も多い空知管内において、景観の異なる新十津川町と南幌町の2町を対象とした。2020年6~7月のデータを対象に、各ワナ地点(新十津川158地点、南幌71地点)における捕獲数を応答変数、植生や河川、建築物との直線距離、各変数と市町村の交互作用項を説明変数とし、また各ワナ地点における設置日数をオフセット項とした、負の二項分布を仮定した一般化線形モデルを作成した。
捕獲数を説明する変数の組み合わせについて検討するため、AICによるモデル選択を行ったところ、建築物、草地、河川からの距離、また建築物からの距離と町、河川からの距離と町の交互作用項を含めたモデルでΔAICが最小だった。草地からの距離はΔAICが2以下であった全ての候補モデルにおいて負の傾向を示していたことから、農村地域においては、草地に近い環境が捕獲数に寄与していることが示唆された。河川や建築物からの距離もほぼ全ての候補モデルにおいて選択されていたが、候補モデルによって傾向は異なっており、捕獲適地の選定において注目すべき環境要因ということ以上のことは明らかにできなかった。
今後、モデルへの当てはまりの向上や選択されたパラメータの妥当性を確かめるためにも、サンプルの拡充や説明変数側の精査が必要である。


日本生態学会