| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-011  (Poster presentation)

魚類個体群動態の状況依存性:原発沿岸地域の長期観察データの非線形時系列解析 【B】
Context-dependency of fish population dynamics: A nonlinear time series analysis of long-term observation data from a nuclear power plant coastal area 【B】

*大友優里(東北大学), 益田玲爾(京都大学), 長田穣(FRA), 川津一隆(東北大学), 近藤倫生(東北大学)
*Yuri OTOMO(Tohoku Univ.), Reiji MASUDA(Kyoto Univ.), Yutaka OSADA(FRA), Kazutaka KAWATSU(Tohoku Univ.), Michio KONDOH(Tohoku Univ.)

個体群動態の環境応答やそのメカニズムを理解することは、基礎生態学及び生態系保全における重要な課題である。生物の多様性を保全する、という応用上の問題を考えた場合、多様な生物に対して逐一個別の理解をすることは大変な労力がかかる。よって、生物種間の環境応答メカニズムの類似性を見つけ出して、それに基づいて生物を分類することは個体群動態の環境応答を探る上で有用な手段である。もっとも一般的なアプローチは形態的・生態的な特徴や生活史によって生物種を機能群(functional group)としてまとめるものである。しかし、機能群を用いたアプローチには、生物の環境反応性に影響する形質は非常に多く、恣意性なく生態的な特徴や生活史の類似した種をまとめるのは容易ではないという困難が存在する。本研究では、恣意性なく生物の環境応答メカニズムの類似性を探るためのアプローチとして、生物種の個体数動態を用いる方法を提案する。具体的なアイデアは以下の通りである;環境変化に生物が影響を受ければその生物の個体数動態は変化する可能性がある。もし2種の生物が同じ環境変化に反応するならば、2種の個体数動態は同じような時期に変化すると考えられる。よって、いつ個体数動態が変化したかで生物を分類すれば、どのような環境変化に反応するかで生物を分類することができる。本研究では、観測していない環境要因についても考慮した統計モデリングが可能な非線形時系列解析の手法(Empirical Dynamic Modeling, EDM)を用いて個体数動態のアトラクタを再構成し,そのアトラクタの変化がいつ起こったのかを検出する手法を開発した。この手法を、高浜原発の温排水による水温上昇の影響を受けている、福井県内浦湾における長期魚類群集観測データ(2012年1月~2019年4月(毎月)、解析対象種は22種)に適用した。その結果、対象となった魚種は環境応答性によって2つのグループに分類された。


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