| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-014  (Poster presentation)

カワラバッタと砂礫河原の環境 3
The relationship between Ensphingonotus japonicus and environment of the gravel bars. Season 3.

*太田真人(龍谷大・里山研), 遊磨正秀(龍谷大・先端理工, 龍谷大・里山研), 森脇優介(龍谷大・院・理工), 久保星(龍谷大・院・理工), 福岡太一(龍谷大・院・理工), 太下蓮(龍谷大・院・理工), 藤田宗也(龍谷大・院・理工), 田邑龍(龍谷大・理工)
*Masato OTA(RCSS), Masahide YUMA(Ryukoku Univ. AST., RCSS), Yusuke MORIWAKI(Ryukoku Univ. ST), Sho KUBO(Ryukoku Univ. ST), Taichi FUKUOKA(Ryukoku Univ. ST), Ren OSHITA(Ryukoku Univ. ST), Soya FUJITA(Ryukoku Univ. ST), Ryo TAMURA(Ryukoku Univ.)

砂礫河原は,定期的な河川の攪乱により植生の発達が抑制され,また上流からの土砂供給により保たれてきた特殊な環境である.砂礫河原にはその環境に適応した生物が生息しており,それらを砂礫性生物という.対象生物であるカワラバッタは日本固有種であり,脚の棘が他のバッタ類と異なり発達しておらず,草本をよじ登るなどが苦手であるため砂礫性環境でしか生息ができない.しかし近年,河川改修などによる河川環境の変化により河原環境は大きく変化した.特に河川の氾濫回数が規模の大小を問わず減少したため,河原の植生が安定し,遷移が進み河原の樹林化が全国的に問題となっている.河原の樹林化は砂礫河原の減少・消滅にもつながり,砂礫性生物は種や数の減少を余儀なくされている.カワラバッタも例外ではなく近畿圏の多くでレッドデータブックに記載されるほど,減少をしている.だが,カワラバッタの生態学的研究は少なく,特に近畿圏での研究はほとんどない.そこで本研究は滋賀県東部を流れる愛知川の砂礫河原においてカワラバッタとその生息環境との関係性を解明することとした.カワラバッタの個体数密度と優占植生種の個体(株)数密度,また展葉面積との関係を重回帰分析でみた結果,カワラバッタ個体数密度はカワラハハコとツルヨシとムカシヨモギ属を用いた式で説明され,カワラハハコと正,ツルヨシと負の関係が見られた.また展葉面積との関係ではツルヨシのみが選択され,負の関係が見られた.次に砂礫河原の砂礫粒径別割合とカワラハハコの株数密度,カワラバッタの個体数密度を比較した結果,カワラハハコでのみ一部の粒径割合で負の相関が見られた.カワラバッタは雑食性であるが過去の文献および飼育による観察からカワラハハコを食すことがわかっているため,カワラハハコの多い環境にカワラバッタが多いのは餌として利用しており,またツルヨシが繁茂する環境は忌避していることが示唆された.


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