| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-023  (Poster presentation)

景観の異なる水田における鳥類群集
Bird communities in paddies in a landscape gradient

*岡崎元哉(横浜国立大学)
*Genya OKAZAKI(Yokohama national Univ.)

 日本の農村景観を代表する水田は周辺環境が多様で独特な景観構造をしている。多くの生物にとって重要な生息地となっており、鳥類も多くの種が利用している。しかし、近年の水田環境の悪化によりその多様性が失われている。水田環境に依存する鳥類種は少なくないため、環境の変化による鳥類群集の変化を予測して対策を立てる必要がある。本研究では種を超えた予測の一般性を得ることができ、また環境要求性のメカニズム推定も可能になるなどの利点から、鳥類種の生態的特性を用いた群集の解析を行った。
 調査は関東平野に調査ベルトを設置し、水田を抽出、それらを繁殖期と越冬期に鳥類調査した。また、水路環境と水鳥の関係性を調べるために対象水田内の水路の水草調査も行った。解析では種の出現傾向と土地利用との関係をロジスティック回帰分析を行い、明らかにした上で鳥類の生態的特性と環境要求性の関係を解析した。また、周辺環境を集計するスケールを変えた多変量解析により、重要な空間スケールを種ごとに調べた上でそのスケールと鳥類の生態的特性との関係性をロジスティック回帰分析により明らかにした。
 解析の結果、水田環境では水鳥を中心とした大型鳥類の重要な生息地となっていることがわかった。水路環境と水鳥の解析では、越冬期のみで沈水植物が存在する水路環境と相関がみられた。鳥類の食性の解析では、越冬期で多くの食性の鳥類種が水田環境に依存している一方で繁殖期では水田だけでなく周辺環境を利用していることがわかった。鳥類の重要な空間スケールは種ごとに多様であり、空間スケールの大きさと形質の関係性では越冬期で翼長に正の相関、体重に負の相関で有意だった。空間スケールの大きさと景観選好性の解析では有意な相関がみられず、鳥類がスケールに関わらず多様な景観を好むことがわかった。


日本生態学会