| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-027  (Poster presentation)

照葉樹林におけるイノシシの攪乱がササラダニ群集に与える影響
Effects of wild boar disturbance on the oribatid community in the ever-green forest

*長谷川元洋(同志社大学), 豊田鮎(香川大学), 原口岳(大阪環農水研), 佐藤重穂(森林総研四国支所)
*Motohiro HASEGAWA(Doshisha Univ), Ayu TOYOTA(Kagawa Univ.), Takashi F. HARAGUCHI(RIEAFOsaka, Biodiv), Shigeho SATO(FFPRI, Shikoku)

近年、野生哺乳類の分布域の拡大による農林業への被害が増加している。イノシシは、農地への侵入、農作物の食害だけでなく、森林の林床を鼻先で掘り返す土壌撹乱によって植栽木の苗を倒す被害も報告されている。イノシシによる林床を含めた土壌撹乱は、植物の地下茎、根、あるいは土壌生物などの餌の探索や、泥浴びに伴って生じ、撹乱場所では林床植生が失われ、土壌生物の多様性と機能が失われるなどの生態系への悪影響が予測される。そこで本研究では、高知県土佐清水市の佐田山国有林において、イノシシの土壌撹乱を排除した区画を設け、イノシシが林床にアクセス可能な区画との土壌動物群集構造の比較を行うことで、イノシシの土壌撹乱がササラダニ群集構造に与える影響の把握を試みた。
調査地はモニタリング1000の準コアサイトに指定されており、定期的に林冠植生の調査が行われている。サイト内に90 mのライントランセクトを置き、イノシシ排除区として10 mおきにイノシシを排除するためのステンレス網かご(40 cm×35 cm)を10点設置した。網かごから2 m以内の地点に、2 m × 2 mの対照区(イノシシの土壌撹乱がある区)を設定した。網かご設置前(2017年6月末)および、設置2年後(2019年8月)に、それぞれのイノシシ排除区と対照区から土壌コア(25 cm2 × 5 cm)各1個を10地点、計20個採取し、実験室に持ち帰り、ツルグレン装置で35℃3日間抽出を行い、採集された土壌動物を同定した。設置2年後において、ササラダニの個体数、種数はイノシシ排除区で有意に多くなった。一方、冗長分析による種組成の解析では、排除区と対照区の間に有意な差は見られなかった。トビムシ群集では、種組成にも排除区と対照区で有意な差が見られたため、こうした違いが生じた理由を考察する。


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