| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-029  (Poster presentation)

同位体比を用いた農地に優占するミミズの生活型の推定
Estimate of the life forms of earthworms in agricultural land of Japan using natural isotope abundances

*金田哲(農研機構), 兵藤不二夫(岡山大学), 池田紘士(弘前大学)
*Satoshi KANEDA(NARO), Fujio HYODO(Okayama University), Hiroshi IKEDA(Hirosaki University)

Bouché(1977)はヨーロッパのツリミミズの生活型を分け、主に表層生息性、地中生息性、地中生息表層採餌性ミミズの3つに分けている。この区分はミミズの生態を良く表していることで、世界的に使われている。しかしBouchéはヨーロッパに生息しているツリミミズを対象に定義づけしているため、彼の定義が世界のミミズに必ずしも当てはまらない。耕起などの人為活動や環境変化に対し、ミミズの反応はそれぞれ異なることから、それぞれの種の生態を把握することで、人為活動や環境変化に対するミミズ群集の反応を推定できるようになる。表層生息種のミミズは生息場所からおおよそ検討がつくが、地中生息種と地中生息表層採餌種のミミズは、どちらの種も土壌に生息しているため区別が難しい。安定同位体は動物の食性推定にも使われており、ミミズでも表層生息性、地中生息表層採餌性、地中生息性の順に安定同位体比が高くなることが示されている。そこで本研究では日本の農地に優占するミミズの生活型を安定同位体比と生息場所から区分することを試みた。調査地は、愛媛県松山市、秋田県横手市、北海道苫小牧市、青森県弘前市、茨城県つくば市の果樹園、防風林、森林の7地点で調査を行った。サンプルは環境データとして植物、リター、土壌(0-5cm、5-10cm、10-20cm、20cm以下)を採取した。それぞれの地点で50×50cmの枠を3ヵ所設置し、葉、リター、土壌を採取していくとともにミミズを深さ別に採取した。設置した枠から十分な個体を採取できない場合は、各種1地点で3個体以上になるように枠外からも採取した。窒素の安定同位体比、生息場所の情報から生活型を区分した。ミミズの種名は形態的特徴から決定するとともに小型の個体、判別が難しい個体についてはDNAを用いて種名を特定した。アオキミミズ、フトスジミミズが表層生息種、ヨコハラトガリミミズが土壌生息表層採餌種、サクラミミズが土壌生息種になり、他の種は中間的な種となった。


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