| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-050  (Poster presentation)

赤色による魚の恐怖情動の促進
Red color enhances fear emotions in fishes

*持田浩治(長崎総合科学大学), 高橋宏司(京都大学)
*Koji MOCHIDA(NiAS), KOHJI TAKAHASHI(Kyoto Univ.)

色と関連した心理学研究の歴史は古く、なかでもヒトは、赤色として知覚する600-700nmの波長域の光に対して強い情動反応を示すことが知られている。恋愛の文脈では、異性に対する性的な魅力を高め、競争や戦いの文脈では、赤色に対して恐怖・萎縮するようになる。類似した現象として、鳥類において未経験の赤色の餌に対して忌避行動を示すこと、ヒト以外の霊長類においても赤色の新奇オブジェクトに対して恐怖行動を示すことが知られている。また鳥類では、赤色と強いコントラストをうみだす黒色を加えたパターン刺激が、こうした反応を高めることが報告されている。本研究では、赤色に対する情動反応、とくに恐怖情動の促進反応の有無を、魚類(ゼブラフィッシュ、Danio rerio)を実験対象に検証した。実験では、新しい環境に移した対象個体に様々な色刺激を提示し、提示後の危機回避行動や恐怖行動の有無を記録した。300-700nmの波長域にシングルピークをもつ赤、黄緑、紫外と、黒との縦縞模様を提示すると、赤と黒の縦縞模様に対して、有意に恐怖行動を示した。また赤と黒で構成する様々なパターン刺激を提示すると、横縞模様やドット模様に比べて、縦縞模様に対して強い恐怖行動を示した。以上の結果は、ヒトで知られる赤色に対する強い情動反応が、脊椎動物において、より普遍的な現象であることを示唆する。


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