| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-084  (Poster presentation)

動物に送粉・種子散布を依存する植物群集の開花・結実フェノロジー:景観レベルの評価
Flowering and fruiting phenology of animal-pollinated and/or -dispersed  plants

*直江将司(森林総合研究所)
*Shoji NAOE(FFPRI)

動物媒植物の開花・結実フェノロジーは動物にとっては花蜜・果実という餌資源の時間的変化である。植物にとっては開花・結実のタイミングであり、その際の環境が植物の繁殖成功を左右する。結果として開花・結実フェノロジーは動植物の分布や個体数に影響を与えると考えられる。しかしながら、フェノロジーは未だ十分に記載されているとはいえず、特に群集、景観スケールでの網羅的研究は少ない。本研究では相互作用が起こりうる景観スケールでフェノロジーを網羅的に記載することで、餌資源の時空間変化(動物側)、群集・景観内での動物資源のニッチ分割(植物側)の理解の橋掛かりを得ることを目的とした。
調査は茨城県北茨城市の小川試験地周辺(標高540~780m)で行った。小川試験地周辺は人工林、広葉樹林、田畑、集落が分布するモザイク景観となっている。2021年4月〜12月にかけて12回訪問し、訪問時に開花・結実した動物媒植物を記録した。滞在日数は合計で32日である。調査で記録された虫媒花植物は425種、動物散布植物は133種であった。虫媒花植物の多くは在来種(345種、81.2%)であったが、外来種(39種、9.2%)、園芸種(41種、9.6%)も少なからずみられた。多くは森林生の草本であった。開花種数は5月にピークがあり、100種以上が開花していた。10月以降は開花種数が急減した。この開花パターンは少なくともハナバチの種数の季節変化とは対応していなかった。動物散布植物の多くは在来種(119種、89.5%)であり、外来種(5種、3.8%)、園芸種(9種、6.8%)は少なかった。多くは森林生の木本であり、周食散布植物であった。結実種数は11月にピークがあり、40種以上が結実していた。8月以前の結実種数は非常に少なかった。この結実パターンは有力な種子散布者である旅鳥の飛来時期と対応していた。


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