| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-124  (Poster presentation)

北海道のブナ北限域における孤立ブナ林の15年間の変化 【B】
Stand dynamics over 15 years in an isolated forest of Fagus crenata at the northern margin of its distribution range in Hokkaido, Japan 【B】

*Shin-ichiro AIBA(Hokkaido Univ.), Eri ABO(Hokkaido Univ.), Seiji MIYAZAKI(Hokkaido Univ.), Yoichi TSUZUKI(Hokkaido Univ.), Demidkhorloo BAYARSAIKHAN(Hokkaido Univ.), Tetsuya MATSUI(FFPRI), Kanji NAMIKAWA(Hokkaido Univ. of Edu.)

北海道では、黒松内低地までブナ林が連続的に分布するが、それより北東側には孤立林が飛び地状に分布する。後志地方蘭越町に位置する幌別岳三之助沢のブナ林はそのような孤立林の一つで、2006年に行われた毎木調査と2007年に行われた年輪調査によって、約200年前に最初のブナが定着し、その後、約100年前の地すべりや1954年の洞爺丸台風による撹乱をきっかけにブナの個体数が増加してきたと推定されている。
この毎木調査区を2021年に再調査し、胸高直径4.8cm以上の樹木について、15年間の変化を分析した。調査区は、標高約460m、傾斜約30度の急斜面に位置し、斜面上の面積で0.75haである。また、年輪調査のデータについても再解析を行い、成長促進が起こった時期を明らかにした。
15年間に林分全体の樹木本数は992本から683本へと31%減少した一方で、胸高断面積(BA)と地上部現存量はそれぞれ11%および20%増加した。本数と平均個体重の関係の変化は両対数グラフで傾き-3/2を示した。ブナはその他の樹種に比べて成長速度が速く、死亡率は低かった。このため、ブナが本数、BA、地上部現存量に占める割合は、それぞれ、66%から75%、59%から67%、60%から68%に増加した。年輪解析の結果から、樹木の定着と既存樹木の成長促進が1930〜1960年ごろに集中的に起こったことが示された。
以上のことから、本調査地は1930〜1960年ごろに継続的に起こった撹乱後の二次遷移の過程にあり、現在はブナを含む各樹種の個体数が減少しつつある自然間引きの過程にあると結論した。耐陰性の高いブナは他樹種に比べて死亡率が低く成長も速いため、ブナの優占度が高まりつつあると考えられる。二次遷移を引き起こした撹乱としては、自然撹乱だけでなく主に薪採取のために行われた択伐も考えられる。


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