| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-149  (Poster presentation)

アラカシ苗木の展葉・落葉および光合成能に対する低温の影響
Effects of low temperature on leaf expansion, leaf fall and photosynthesis of Quercus glauca plants

*小野清美(北海道大学)
*Kiyomi ONO(Hokkaido Univ.)

葉の展開から落葉までの期間を葉の寿命と考えると、葉がどのような条件で展開して落ちるのかを知ること、また光合成能がどのように変化するのかを知ることは、個体の物質生産を考えるうえで重要である。アラカシは比較的温暖な地域に生息する常緑広葉樹である。アラカシ苗木を昼温22℃(夜温18℃)と昼温10℃(夜温8℃)の2つの温度条件(日長12時間)で生育させたところ、昼温10℃ではアラカシ苗木の展葉・落葉が遅れた。また、アラカシ苗木を北大低温研(北海道札幌市)で、11月10日からガラス室(温度制御なし)で栽培したところ、1年葉の光合成能力(葉温20℃前後で測定)はすでに低下し、光化学系IIの最大量子収率(Fv/Fm、室温20℃前後で測定)が0.5-0.7程度であったが、最低気温が0℃前後になる時期にさらに低下した。当年葉の光合成能力には12月上旬までは低下があまり見られなかった。最高気温が0℃を下回った12月下旬から1月上旬にかけて当年葉のFv/Fmは低下した。実験に用いることができた個体数が少なかったために明確に結論付けることはできないが、光合成能力の低い1年葉の方が、気温の低下に伴うFv/Fmの低下が早く、また大きいという傾向がみられた。ポット栽培の影響のためか、1月上旬にはポットの土壌凍結が起こり、この時期のFv/Fmは0-0.2程度になり、葉は乾燥状態になり枯死した。
昼温10℃、日長一定条件では、展葉(シンクの成長)が抑えられることによって、すでについている葉が長く保たれたと考えられる。一方、温度制御をかけていないガラス室の場合には、気温が大きく低下し、Fv/Fmの低下が見られ、最終的には土壌凍結の影響もうけて、葉は枯死した。生育温度が葉の寿命に与える影響を考えるときに、シンク・ソース関係による資源利用と低温による光ストレスの両方が影響を与えることを考慮に入れる必要がある。


日本生態学会