| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-159  (Poster presentation)

群落光合成を最大化しない葉面積指数の適応的意義: クズ群落のケース
Supra-optimal leaf area index of kudzu for competition with tall goldenrod at the expense of canopy photosynthesis

*及川真平(茨城大学)
*Shimpei OIKAWA(Ibaraki University)

植物群落で実測された葉面積指数(LAI)は, 群落の光合成速度を最大にするLAI(最適LAI)よりも大きい。これは, 群落を構成する植物の各々が葉面積を増やせば, それぞれの受光量を増やすことができるからである。最も高いLAIを示す植物のひとつに, マメ科の落葉性木本クズ(Pueraria lobata)がある。クズが優占する植物群落のLAIは生育環境等により大きく変動するが, 時に10に達する。その高いLAIは, 隣り合う植物が吸収できる光を著しく低減し生存を妨げる。しかし, 自身が利用できる光の量, 炭素獲得をも低減してしまう。群落光合成モデルと感度分析により, クズが優占する群落のLAIは最適LAIよりも2.2–3.0倍大きいことがわかった。この群落で実測されたLAIと最適LAIの差は, 過去に報告されたどの種よりも大きかった。続いて, 一部の葉を切除することで最適LAIに近い葉量を維持する野外実験を行った。切除実験を開始して3ヶ月後, 亜優占種であったセイタカアワダチソウがクズに取って代わった: クズの地上部バイオマスはおよそ半減し, セイタカアワダチソウの地上部バイオマスは3倍近くまで増加した。光競争環境下では, 群落光合成の最大化ではなく, 期待される最適よりも大きなLAIを持つことが重要であることを実験的に示すことができた。


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