| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-160  (Poster presentation)

夏落葉低木ナニワズの落葉期間の個体間変動
Inter-individual variation in the defoliation period of the summer deciduous shrub, Naniwazu.

*橋本徹(森林総研北海道)
*Toru HASHIMOTO(FFPRI Hokkaido)

 ナニワズは盛夏に落葉するというユニークなフェノロジー特性を持っている。これまでの研究で、ナニワズの夏期の落葉期間には個体差があることがわかり、最長と最短で約40日の差を記録した。調査地(札幌)での無雪期間(4~11月)を光合成可能期間と考えると、落葉期間が最も長い個体の光合成可能期間は最短個体と比べて17%も短くなる。しかし、この結果は約12本の葉フェノロジーモニタリングによる。そこで、落葉期間の個体間差とその年変動の実態を把握するために、より観察個体数を増やして、落葉期間を調べた。【方法】調査は、森林総合研究所北海道支所の羊ケ丘実験林で行った。これまで約12本の個体の葉数を毎週計数していたが、それに加えて葉の有無のみを確認する簡易調査を行った。2018年は56本、19年は50本、20年は29本の幹を観察した。調査期間中の日射量、気温、降水量は北海道農業研究センター気象観測露場における観測値を参考にした。【結果と考察】落葉期間とその標準偏差は、52.4±14.5日(2018)、39.1±16.8日(2019)、41.5±24.6日(2020)と大きな個体間変動があった。また、落葉期間とその標準偏差に年変動もあった。落葉期間は、落葉初日と開葉初日(≒落葉末日)によって決まるが、落葉期間の個体間変動と年変動はその両方が変化することで変動していた。2019年と20年では落葉期間が0日(春葉が落葉する前に夏葉が開葉した)の個体が1個体ずつ確認された。落葉期間の年変動と環境要因(日射量、気温、降水量)の間に何らかの関係は認められなかった。2018年時に落葉期間の長かった個体ほど19年、20年も長いという傾向はなかった。落葉期間の長さは同じ個体でも年によって変化していた。
 ナニワズの落葉期間の個体間差と年変動は、気象要因または遺伝的に固定されたものではなく、偶然または外的な別の要因によると考えられる。


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