| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-184  (Poster presentation)

日本沿岸における藻場の分布状況について 【B】
Distribution of seagrass/seaweed beds around Japan 【B】

*仲岡雅裕(北海道大学), 須藤健二(北海道大学), 島袋寛盛(水産研究・教育機構), 堀正和(水産研究・教育機構)
*Masahiro NAKAOKA(Hokkaido University), Kenji SUDO(Hokkaido University), Hiromori SHIMSHIMABUKURO(Japan Fish Res & Edu Agency), Masakazu HORI(Japan Fish Res & Edu Agency)

沿岸生態系の中で重要な機能を持つ藻場は世界的な減少が懸念されている。我が国においては、環境省が昨年、2018~2020年に行われた全国の藻場の分布状況に関する調査結果を公表した。それによると、全国の藻場分布面積は1,643 km2で(一部の閉鎖性海域等を除く)、同様の全国調査が行われた1989~1991年より減少していることが明らかになった。しかし、藻場面積の推定方法は、前回は現地観測と聞き取り調査によるものだったのに対し、今回は高解像度の衛星画像を用いた判別により行っており、確度・精度ともに大きく異なっている。また、各地で磯焼けや海岸改変による減少が報告される一方、水質改善や再生事業により藻場が回復した報告も近年は寄せられるようになった。そこで、本研究では、上記環境省の報告を基に、地域別、藻場タイプ別(アマモ場、海草藻場)に、藻場の長期変動に関する広域解析を試みた。アマモ場を対象とした予備解析では、上記期間における各地の藻場の面積の増減率は、1%~800%以上と大きな変異があった。東北太平洋岸では減少しているアマモ場が多い一方、瀬戸内海では増加している場所が多く、前者は2011年の東日本大震災に伴う津波の影響、後者は近年の貧栄養化による水質改善の影響が示唆された。その他の地域では藻場の増減パターンに一貫した傾向は見られなかった。2018~2020年の報告では、1989~1991年における情報欠損域の藻場が新たに多数追加されており、これが藻場面積増加の過大評価に結び付いている可能性もある。今後、他の資料を加えた検証を行う必要が指摘される。


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