| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-188  (Poster presentation)

シカの影響を受ける京都市内のナラ枯れ跡地の更新状況
Regeneration from mass mortality of oak trees in Kyoto, under deer pressure

*伊東宏樹(森林総研北海道)
*Hiroki ITO(Hokkaido Res. Ctr., FFPRI)

銀閣寺山国有林(京都市左京区)のナラ枯れ跡ギャップにおいて、森林の更新状況を調査した。この森林ではシカ採食の影響が大きく、京都大阪森林管理事務所が、ナラ枯れ跡ギャップの一部に2011年にシカ柵を設置している。このシカ柵の内外それぞれに2015年に15m×15mの方形区を設定し、新規更新木を対象として毎木調査を実施した。今回、2021年に再調査を実施し、6年間で更新状況がどのように変化したのかを検討した。
2015年には、柵内方形区ではカラスザンショウ・アカメガシワ・アラカシ・ウワミズザクラなどが更新していた。一方、柵外方形区で更新していたのは、シカの不嗜好性樹種であるナンキンハゼおよびクロバイのみであった。この時点では胸高直径10cm以上にまで成長していた幹は柵内外ともに存在しなかった。
柵内方形区で2015年にもっとも多かったカラスザンショウは、2021年には37本から20本に減少していたが、胸高直径10cm以上のものが12本あった。また、アラカシは萌芽により19本から35本に増加していた。一方、アカメガシワは17本から2本に減少していた。柵外方形区では、ナンキンハゼが8本から21本に増加し、うち胸高直径10cm以上にまで成長したものが2本あった。また、クロバイは19本から328本に増加していた。柵外方形区でその他に更新していた樹種は、サンショウ2本とスギ1本のみであった。
シカ柵外のナラ枯れ跡ギャップで更新していた樹種は依然としてほぼナンキンハゼとクロバイに限られていたが、そのうちでもクロバイの更新が著しかった。柵内との相違は依然として大きく、シカ採食圧の強い影響のもとでは通常とは異なる更新過程を経ることが改めて予想された。


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