| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-193  (Poster presentation)

中大型哺乳類の行動が枯死木分解速度にあたえる影響 【B】
Effects of mammal behavior on deadwood decomposition 【B】

*栗原洋介(静岡大学)
*Yosuke KURIHARA(Shizuoka Univ.)

枯死木(粗大木質リター)は森林に大量に存在するだけでなく、生物多様性や物質循環を支えるなど生態系で重要な役割を果たしている。その分解は主に真菌や節足動物が担うことが知られている一方、中大型動物が枯死木分解プロセスにどのように関与するかはよくわかっていない。本研究の目的は、中大型哺乳類の行動が枯死木の体積減少にあたえる影響を解明することである。鹿児島県・屋久島の暖温帯常緑広葉樹林において、林内 10 か所に分解後期のマテバシイ白色腐朽材を設置し、2019 年 12 月から 2020 年 12 月まで定期的に材の体積を測定した。対象の材は 2 分割し、一方は動物が壊せないようにネットをかけ、もう一方はそのまま放置した。また、自動撮影カメラを用いて、材を訪れる哺乳類とその行動(材を壊す、踏む、など)を記録した。得られたデータを用いて、哺乳類の訪問および各行動の生起頻度と材の体積減少との関連を検討した。動物が壊せないようにネットをかけた材はそのまま放置した材に比べ、体積減少が遅い傾向がみられた。そのまま放置したすべての材がサルによる破壊を受け、それにより体積が大きく減少した。さらに材の体積が小さくなると、シカに踏まれる頻度が高くなる傾向にあった。屋久島では、サルが分解後期の材を細片化し、シカが細片化された材を踏むことで、枯死木の分解速度に影響を及ぼしている可能性がある。


日本生態学会