| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-206  (Poster presentation)

平水時・出水時の河川を流れる懸濁物質の起源の変化
Differences in the source contributions to suspended solids between base- and high-flow river conditions

*新井宏受(福島県環創セ), 藤田一輝(福島県環創セ), 那須康輝(福島県環創セ), 谷口圭輔(津山高専)
*Hiriotsugu ARAI(FPCEC), Kazuki FUJITA(FPCEC), Kouki NASU(FPCEC), Keisuke TANIGUCHI(NIT, Tsuyama College)

河川を介した物質輸送において、懸濁物質(SS)は様々な物質を輸送するキャリア(懸濁態)として重要な役割を果たしている。そのため、河川水中のSS濃度が大幅に上昇する出水時に年間総フラックスの大半が輸送される例が報告されている。この事は、出水時の河川には平水時の河川水中には存在しないSS成分が存在し、総フラックスの大半はそれら追加のSS成分による事を示唆している。本発表では、SS中のセシウム137濃度(Cs-137)、全炭素濃度(TOC)、炭素安定同位体組成(d13C)を基に、平水時・出水時のSSに対して流域内に存在する潜在的なSS起源からの寄与率を推定し、流況の変化に伴う相対寄与率の変化を明らかにした。
 福島県中通りを流れる河川を対象とし、平水時・出水時の河川水に含まれるSSを採取し、SS中のCs-137、TOC、d13CをGe半導体検出器又はEA-IRMSにより測定した。各項目について平水時と出水時を比較すると、①出水時には平水時よりも低下、②平水時には幅広いレンジを示すが、出水時には概ね一定の値へと収束、といった結果が得られた。そのため、出水時にSS濃度を上昇させる成分は放射能汚染が少ない無機物が主体であると考えられた。潜在的なSS起源として選定した森林土壌・リター、河川敷土壌、及び河床堆積物のデータを基に、SIAR(Stable Isotope Analysis in R)により平水時・出水時のSSに対する各起源からの相対寄与率を推定したところ、平水時には森林土壌が最大の供給源であると推定された。一方、出水時においても森林土壌は一定程度の寄与率を示すものの、河川敷土壌及び河床堆積物の寄与率が高まるといった推定結果が得られた。これらの結果を踏まえ、発表では福島県においては未だ大きな関心が寄せられている河川を流下する懸濁態放射性セシウムの起源及びその変化についても検討する。


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