| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-214  (Poster presentation)

乗鞍岳における高山帯と亜高山帯でのヒメマルハナバチの花利用特性の違い
Differences in foraging pattern of Bombus beaticola between alpine and subalpine zones of Mt. Norikura

*江川信, 近藤輝留, 中瀬悠太, 田路翼, 市野隆雄(信州大学)
*Shin EGAWA, Hikaru KONDO, Yuta NAKASE, Tsubasa TOJI, Takao ITINO(Shinshu Univ.)

 送粉者の多様性の減少は関係を持つ植物の種の多様性と形態の多様性の両方に影響すると予想されるが、それを実証した研究は少ない。送粉者の減少は必然的に動物媒植物の他家受粉に影響を与えると考えられ、その結果として植物の多様性の減少を引き起こすとされている。また送粉者の多様性の減少は植物の種数の減少のみならず、特定の送粉者に対する適応を通じた、形態の収斂も生じさせると考えられる。しかし、このような影響を評価するためには、網羅的で長期的な観察が不可欠であり、これまで得られてきた情報は限られたものであった。そこで、山岳地域の送粉共生系に着目し、送粉者の多様性の減少が植物の種の多様性と形態の多様性に及ぼす影響を評価するため、まず、虫体付着花粉から送粉者と植物のネットワークを明らかにすることを試みた。
 本研究では亜高山帯から高山帯でのマルハナバチとその利用植物のネットワークを目視による観察と虫体付着花粉から記録した。乗鞍岳の長野県側2600m地点と1750m地点および1600m地点の3地点に調査地を設定し、7月から9月にかけて花に訪花したマルハナバチを採集し、種名と訪花した植物種名を記録した。マルハナバチの虫体に付着した花粉を部位ごとに採取し(頭部、胸部、脚部および花粉塊)、マルハナバチが利用した植物の種数を記録した。
 先行研究と同様に、高山帯では小型のヒメマルハナバチが優占しマルハナバチの種多様度は低く、亜高山帯では5種のマルハナバチが確認されマルハナバチ種の多様度は高かった。一方で、マルハナバチの利用した植物種の多様性は高山帯と亜高山帯で大きく変化しなかった。ヒメマルハナバチの採餌様式が高山帯と亜高山帯でどのように変化したかについて、種レベルで利用する植物種の多様性の違いと、個体レベルで利用する植物種の多様性の違いを比較検討する。


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