| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-263  (Poster presentation)

日本における外来植物の侵入速度
Rate of alien plant invasion in Japan

*江川知花(農研機構 農環研), 小山明日香(森林総研)
*Chika EGAWA(NIAES NARO), Asuka KOYAMA(FFPRI)

増え続ける侵略的外来種への対策は、生物多様性保全上の重要課題である。このためポスト2020生物多様性枠組では、目標6に「侵略的外来種の侵入経路を特定・管理し、その導入と定着の速度を少なくとも50%減少させる」ことを含めることが検討されている。この目標を達成するには、外来種の主要な侵入経路と経路ごとの侵入動態を解明し、「導入と定着の速度(侵入速度)」を定量的に把握する必要がある。しかし日本では、外来種の侵入がどのような経路・スピードで進行してきたのか、いずれの分類群でも十分明らかにされていない。本研究では、外来種の侵入速度を「1年間に新しく記録される外来種数」として定義し、植物を対象に、過去100年間および最近のトレンドを経路ごとに解明することを試みた。

日本維管束植物目録から抽出した定着済みの外来植物約1,800種を対象に、侵入経路に関する情報を図鑑や文献から収集した。また、国内初記録年を初めて標本が採集された年として博物館の標本情報からデータを収集した。標本登録の遅延を考慮し、2000年までを検討期間とした。

意図的輸入および輸入物への混入を通じた外来植物の新規侵入速度は、1930年頃まで増加し、以降は安定又は減少に転じていた。一方、経路不明の種の侵入速度は1900年から2000年までの100年間、継続的に増加していた。直近30年(1970~2000)の新規侵入速度は、意図的輸入を通じたものが平均3種/年、輸入物への混入によるものが1種/年、経路不明が10種/年と推定された。以上より、日本には依然として毎年新たな外来種が侵入していること、特に経路不明の種の侵入が増えていることが示された。直近30年間の値を基準とした場合、ポスト2020枠組目標6達成のためには、新たに侵入する種数をすべての経路を合わせて7種/年以下に抑える必要があり、経路に関わる多様なセクターによる対策が必要と考えられた。


日本生態学会