| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-313  (Poster presentation)

棚田跡地の半自然草地における植生再生を制限する要因
Factors determining the restoration of semi-natural grasslands on former terraced paddies

*丹野夕輝(静岡大学, (株)エコリス), 山下雅幸(静岡大学), 澤田均(静岡大学)
*Yuki TANNO(Shizuoka Univ., Ecoris Inc.), Masayuki YAMASHITA(Shizuoka Univ.), Hitoshi SAWADA(Shizuoka Univ.)

長年維持されてきた半自然草地は多くの草原生植物の生育地であるが、近年急速に減少している。耕作地跡などに新しく形成された半自然草地は草原生植物の代替生育地と期待される。しかし、その機能を評価した研究は日本では少ない。本研究では、静岡県中西部の茶草場(茶園の敷草を刈るための半自然草地)を対象として、棚田跡地に成立した半自然草地の種組成と、植生再生を制限する要因について調査した。 2012年7月から2013年6月に、静岡県菊川市および島田市の、歴史の長い茶草場9カ所と棚田跡地の茶草場6カ所で調査を行った。各茶草場にコドラート(2.25 m2)を2~12個ずつ設置し、コドラート内に出現した植物、開空率および土壌条件を記録した。種組成の傾向を全体的に比較するため、序列化を行った。環境条件が植生の再生にどの程度影響しているかを推定するため、同時分布推定モデル(Joint SDM)を使用した。周辺の歴史の長い茶草場からの距離をもとに、棚田跡地の茶草場に関する生育地の結合度を評価した。 種組成の序列化の結果、棚田跡地の茶草場の種組成は歴史の長い茶草場と概して異なっていた。Joint SDMを使用した解析の結果、種組成の違いは部分的に環境条件の違いに起因するが、環境条件の違いだけで説明できない部分も残ることが示された。生育地の結合度と種組成の間に明確な関係性は認められず、種子の移入が植生再生をどの程度制限しているかは不明確だった。


日本生態学会