| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-314  (Poster presentation)

客土・耕起は草原生植物の発芽・生長を促進するか?
Does adding soil or cultivation promote the germination and growth of grassland plants?

*相澤章仁((株)大林組)
*Akihito AIZAWA(Obayashi Co.)

草原生植物は採草・放牧地などの二次的自然で多くが維持されてきたが、管理がなされず放棄される場所が増え、その生育地は減少している。本研究では日常的に草刈などの管理が行われている外構緑地で草原生植物を用いた緑化を行うことの可能性を探るため、基礎的な試験を行った。東京都清瀬市にある大林組技術研究所の外構緑地において、客土・耕起区、対照区を設置して、草原生植物の播種試験、植栽試験を行った。播種試験は2020年11月に試験区を設定して播種を行い、2021年10月時点で発芽・定着している個体数を数えて評価した。試験区は2つに分けて行ったが、ツリガネニンジン、オカトラノオ、ノハラアザミ、アキカラマツ、シラヤマギクの種子を播種した試験区では、すべての種で客土区の発芽数が多く、続いて耕起区、対照区の順に発芽数が多かった。ツルボとニガナを播種した試験区では、ツルボの発芽が客土区で多く、続いて対照区、耕起区の順で発芽数が多かった。ニガナの発芽は確認できなかった。客土区とその他の試験区の発芽数は大きな違いが見られたため、既存の土壌では草原生植物が世代交代を正常に行えない可能性が示唆された。植栽試験は2021年5月に試験区を設置して苗の植栽を行い、2021年10月に生残数と葉数を計測した。植栽試験にはホタルブクロ、ミツバツチグリ、ニガナ、アキノタムラソウ、ノハラアザミを用いたが、植栽から調査まで1年経っていないこともあり、生残数に明らかな差は見られなかった。繰り返しの多いホタルブクロ、ミツバツチグリについて生残個体の葉数を集計すると、どちらの種も客土区で葉数が多く、耕起区・対照区では同程度であることがわかった。今後モニタリングを続けることで、生残数の違いの有無を明らかにしていくと共に、他の場所にも知見を適用できるよう、土壌の解析なども進めていく。


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