| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-15  (Poster presentation)

大垣市に生息するマホロバサンショウウオの生活史の解明Ⅱ
Life cycle of Mahoroba salamander(Hynobius guttatus) in Ogaki City, Gifu Ⅱ

*淺野公聖, 山田千隼, 鹿野龍浄, 棚瀬瑛祐, 高木雅紀(大垣北高等学校)
*Kosei ASANO, Chihaya YAMADA, Ryujo SHIKANO, Eisuke TANASE, Masaki TAKAGI(Ogaki-Kita Senior High School)

岐阜県大垣市内のマホロバサンショウウオの生息地に,ヒダサンショウウオと共存する沢とマホロバサンショウウオのみが生息する沢がある。この生息地の本流最上流部と5か所の枝沢で,各沢の環境の違い,マホロバサンショウウオ・ヒダサンショウウオと捕食者であるイワナ等の魚類の生息の有無を調査した。マホロバサンショウウオとヒダサンショウウオについては,現地での捜索に加えて,環境DNAについても調査を行った。その結果,マホロバサンショウウオは魚類の有無に関係なく生息し,ヒダサンショウウオは捕食者となる魚類(イワナ・アマゴ)が生息していない沢に生息していることが分かった。マホロバサンショウウオは伏流水中で産卵,幼生が成長,変態,上陸するため,捕食者の魚類がいる沢でも幼生が捕食される危険性が低い。一方,ヒダサンショウウオは沢の石の下などで産卵し,孵化した幼生が泳ぎだすので,捕食者の魚類が生息する沢では捕食される危険性が高いためであると考えた。また,同地域ではナガレヒキガエルの幼生は淵や流心部で見られるが,カジカガエルの幼生は水深が浅い沢の端に多く見られる。このすみわけについても,捕食者の有無に起因すると考えた。そこで,実験室内においてそれぞれの幼生と捕食者の魚類を同一の水槽に入れ,各捕食者と幼生の組み合わせによって,幼生の捕食されやすさを比較した。調査地で捕獲したイワナ,アマゴはナガレヒキガエルをほとんど捕食せず,カジカガエルを多く捕食することが分かった。ナガレヒキガエルの幼生は毒をもつため捕食を免れ,強い毒をもたないカジカガエルの幼生は水深が浅い沢の端に生息し,捕食を免れていると考えた。北海道産のエゾイワナで同じ実験を行ったところ,両種の幼生を同程度捕食した。ナガレヒキガエルが生息していない北海道に生息するエゾイワナは,ナガレヒキガエルが強い毒をもつことを学習していないため,捕食すると推測される。


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