| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-17  (Poster presentation)

日立市宮田川流域の生物相~小さな命たちの深いつながり~
Aquatic fauna in the Miyata River,Hitachi City:Deep interaction of the little lives

*吉原陽向, 大久保慶志, 清水睦月, 森勇弥, 小室秀顕, 齋藤祥真, 黒澤飛翔, 髙橋ゆうか, 長山颯汰(明秀学園日立高等学校)
*Hinata YOSHIHARA, Keiji OKUBO, Mutsuki SHIMIZU, Yuuya MORI, Hidenori KOMURO, Shouma SAITO, Asuka KUROSAWA, Yuuka TAKAHASHI, Souta NAGAYAMA(Meishu Gakuen Hitachi H.S)

宮田川は、茨城県日立市を流れる全長約7.8kmの二級河川である。日立鉱山の創業以来、工業や生活廃水の影響を受け川の汚染が進んでいたが、近年では水質が改善され、多くの生物が再び見られるようにあんった。
今年度研究においては上流域の調査を開始し、昨年度の研究を含めた、宮田川全域の水生生物相についての3年間の調査結果を総括した。また、今年度からはパックテストによる簡易水質調査を開始し、宮田川の水質環境についても検証した。
その結果、2019年から2021年にかけて、約30種類の水生生物が宮田川で確認された。今年度調査においては、テナガエビや茨城県RDBで準絶滅危惧種に指定されているニホンウナギ(幼生のみ)などの水産業における重要種の分布なども確認された。なお、魚類は上流に1種(ボウズハゼのみ)、中流から下流に5種が分布している。
水質評価法マニュアルに従った水質判定においても、全体的にASPT値(平均スコア)が高い数値を示した。一方で、パックテストによる水質調査では、CODやBODやリン酸態イオンなどは概ね良好な数値を示したものの、硝酸態窒素や亜硝酸態窒素のイオン濃度が上流側で高濃度である傾向が見られた。
今年度の調査では、秋には上流、春には中流、夏・秋には下流にモクズガニが発見された。この調査結果を踏まえると、宮田川はモクズガニの繁殖地である可能性が非常に強い。
また、本河川で発見された魚類は、ヨシノボリやウナギなどの硝酸態窒素・アンモニア態窒素などの濃度が比較的高い場所でも生息できる種が多い。宮田川の魚類相には、アンモニウム態窒素や硝酸態窒素が大きく影響している可能性が高いと考えられる。
今後、本河川の生物多様性保全のためには、これまでの重金属イオンに加えて、硝酸態窒素・アンモニア態窒素の排出量の基準値の見直し魚道の設置などが必要となるだろう。


日本生態学会