| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-27  (Poster presentation)

トビ棘口吸虫の宿主サイクル
Host  cycle of Echinochasmus tobi

*岡田琉生, 中田大雅, 遠藤楓斗(岐阜県立岐山高等学校)
*Ryusei OKADA, Taiga NAKADA, Huto ENDO(Gizan high school)

【背景・目的】
   トビ棘口吸虫とは、カワニナを第一中間宿主、魚を第二中間宿主とし、鳥を最終宿主とすると考えられる寄生虫であり、カワニナ体内ではセルカリアの状態で、魚の鰓ではメタセルカリアの状態で寄生している。今回はトビ棘口吸虫セルカリアが魚に寄生した後、実際に鳥に寄生するのか、寄生していればどのように寄生しているのかを調査することを目的とし研究を行った。
【材料・方法】
   鳥にトビ棘口吸虫が寄生しているのかを確認するために、千本松原コロニーで採捕されたカワウ7羽の腸管解剖を行った。解剖方法は、カワウの腸管の入り口、中央、出口の三か所を切り開き、内側の柔毛組織に付着している粘膜をミクロスパーテルでこそげとり生理食塩水0.9%で撹拌した後、実体顕微鏡で観察する。
【結果・考察】
    解剖の結果、解剖したカワウ7羽(成鳥4羽、亜成長1羽、幼鳥2羽)のうち2羽(幼鳥2羽)の腸管(入り口、中央、出口の3カ所全て)でトビ棘口吸虫(Echinochasmus milvi)の成虫を発見した。成虫の頭部にある棘をカワウの腸管に引っ掛けている様子も確認出来た。この結果より、トビ棘口吸虫は魚に寄生した後、最終宿主として鳥の腸管に寄生しメタセルカリアから成虫になると考えられる。
 トビ棘口吸虫の成虫が見つかったカワウはどちらも幼鳥であった。幼鳥は成鳥に比べて消化器系の発達が未熟であるため、トビ棘口吸虫の侵入に対する抵抗性が低く感染率が高くなると考えられる。
【今後の展望】
   トビ棘口吸虫のセルカリア、メタセルカリア、成虫のDNA解析を行うことにより、カワニナ、魚、カワウに寄生するトビ棘口吸虫(Echinochasmus milvi)の生活環の予想の裏付けをしていく。また、カワウの解剖をさらに行い腸管の位置により寄生の分布に違いがあるのかを調べていく。さらに、カワウの排泄物内にトビ棘口吸虫の卵を見つけることにより、最終宿主である鳥から第一中間宿主であるカワニナに寄生することを確認したい。


日本生態学会