| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-34  (Poster presentation)

与那国馬の行動と生理
Behavioral and physiological patterns of a Yonaguni horse

*管野瑠海(琉大カガク院), 久保田広洋(琉球大学農学部), 江藤毅(琉球大学農学部)
*Rumi KANNO(GSC (Univ. Ryukyus)), Koyo KUBOTA(Agr. Univ. Ryukyus), Takeshi ETO(Agr. Univ. Ryukyus)

 与那国馬は、与那国島で古くから飼養されてきた日本在来馬の1つであり、保全に向けた取り組みが行われている。与那国島の平均気温は、馬にとって快適とされる温度域よりも高いため、与那国馬は暑熱環境に曝される頻度が高いと予想される。しかし、暑熱に対する与那国馬の行動や生理に関する知見はない。そこで本研究では、暑熱環境下における与那国馬の活動量、心拍数、皮膚温の変動パターンを調査した。供試動物として、琉球大学亜熱帯フィールド科学教育研究センターで放牧されている与那国馬1頭(雌)を用いた。調査期間は、2021年4月から7月までとした。5月以降の調査地の平均気温は、馬のウェルフェア飼養管理評価マニュアルで馬にとって快適とされる温度域の上限を超えていたため、与那国馬は暑熱環境に曝されていたと考えた。活動量は、GPS装置を馬の頭絡に取り付けて位置情報を記録し、移動距離を求めた。心拍数と皮膚温は、与那国馬の腹部に心拍センサー、電極ベルト、温度記録用データロガーを取り付けて記録した。得られたデータを昼、夕方、夜の3つの時間帯に分けて解析した。さらに心拍数と皮膚温、心拍数と気温、皮膚温と気温との相関関係についても調べた。活動量は、各時間帯で顕著な差は認められなかった。皮膚温については、気温との間に相関があった。しかし、心拍数と気温との間には相関がなかった。各月、各時間帯における心拍数と皮膚温の相関は低い傾向にあり、気温の高い時間帯に顕著な心拍数の増加は見られなかった。一般的に、暑熱環境下に動物がおかれると、体温調節機能が働き体温や代謝が上がるため、心拍数の増加も予想される。しかし、本研究では、皮膚温の上昇は認められたものの、心拍数については、月ごとに大きな変化は認められなかった。これらのことから、平均気温が高い環境で飼養されてきた与那国馬は、他の馬品種と比べて暑熱に適応している可能性が考えられた。


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