| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


シンポジウム S01-4  (Presentation in Symposium)

大規模食性解析から食物網ネットワークの季節動態を探る
Exploring the seasonal dynamics of food web networks from large-scale dietary analysis

*鈴木紗也華(京都大・生態研), 馬場友希(農研機構), 木庭啓介(京都大・生態研), 東樹宏和(京都大・生態研)
*Sayaka SUZUKI(Kyoto Univ.), Yuki BABA(NARO), Keisuke KOBA(Kyoto Univ.), Hirokazu TOJU(Kyoto Univ.)

捕食−被食関係からなる食物網構造は、生態系を理解する上で重要であり、これまで様々な環境で研究が行われてきた。陸上生態系においては、一次消費者(昆虫類)に季節消長がみられることから、食物網構造は季節的に大幅に変化することが予想される。しかし、季節的な変化を考慮した実証研究例は少ない。
講演者は陸上生態系の中で中間捕食者として位置しているクモ類を対象生物とした。クモ類は地上部由来の昆虫類だけでなく、地下部由来の生物も捕食することから、地下生態系と地上生態系間の栄養流入(resource subsidy)において重要な役割を果たしている。
本研究では4月から11月にかけて2000個体以上のクモ類を採集し、DNAメタバーコーディング解析を用いて大規模な食性解析を行った。これまでクモ類−餌生物のネットワーク解析を行ってきたが、本発表では、特に地上部−地下部の繋がりを中心に研究成果をお話したい。検出された餌生物の分類群について、植食者、肉食者/寄生者、腐食者に分類し、季節的に餌生物の構成がどのように変化するのかについて調べた。その結果、地上性捕食者であるクモ類は、一年を通じて恒常的に地下由来の餌生物を捕食していることが明らかとなった。「季節性」及び「地上−地下」に着目することで、陸上での食物網および栄養流入についてより深く理解できる可能性が示唆された。最後には、今後の研究の展望についても議論していきたい。


日本生態学会