| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


シンポジウム S02-1  (Presentation in Symposium)

災害リスクの全国評価とEco-DRR
National-scale evaluation of disaster risks and Eco-DRR

*瀧健太郎(滋賀県立大学, 総合地球環境学研究所)
*Kentaro TAKI(University of Shiga Prefecture, RIHN)

現在、水防法に基づく浸水想定区域図や洪水ハザードマップの整備が全国で進められているが、全ての河川から氾濫をカバーしているわけではない。また、河川毎に想定外力が異なり、外水氾濫と内水氾濫は別々に計算されている。この課題を解決するため、滋賀県は、内外水を同時に考慮でき、降雨~流出・流下~氾濫までの一連の水文プロセスを追跡可能な統合水理モデルを独自に開発し、県全域で発生頻度別の浸水想定を公開している(解像度は50x50m)。全国展開が望まれるが、計算技術はあるもののデータ収集・計算コスト等が障壁となり実現には至っていない。

本研究では、同県の計算結果を教師データとした機械学習(勾配ブースティング決定木)モデルを作成し、日本全国の浸水想定を試みるとともに、その適用性を考察する。予測モデル作成に際し、地形条件に着眼しDEMから生成可能な空間情報を説明変数とした。予測値は、滋賀県の100年、200年、1000年確率降雨に対応する浸水深とした。滋賀県の統合水理モデルでは、滋賀県降雨強度式から中央集中型のモデルハイエトグラフ(継続時間24時間)を作成し外力としている。なお、今回の浸水想定では破堤現象は考慮していない。予測モデルの妥当性については、台風19号(2019)の千曲川・那賀川での氾濫実績と比較して確認した。結果、浸水深には、窪地の深さや多さ、集水面積、TWI、河川水面から比高などの寄与が大きいことが明らかになった。

また本発表では、上記3段階の浸水に対する建物・農作物等の被害率を市区町村単位と1kmグリッド単位で集計した結果を図示する。行政単位とグリッド単位の双方で比較することで社会的・地形的な地域性を視覚的に捉えることができる。これに加え、現在、気候変動・人口減少下での土地利用のあり方を議論できるよう、生態系サービスの評価研究と連携しつつ、結果の読み取り方の十分な解説を加えた上で、一般公開する準備を進めている。


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