| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


シンポジウム S09-2  (Presentation in Symposium)

農地における生物多様性保全のエビデンス
Evidence for biodiversity conservation in farmland

*片山直樹(農研機構)
*Naoki KATAYAMA(NARO)

農地は食糧生産のための場であるが、生物多様性の保全を含む多面的機能も有している。農地の多面的機能が十分に発揮されるためには、食糧生産と生物多様性のトレードオフを解決しなければならない。本講演では、まず農地の生物多様性保全に有効な取組を明らかにする。システマティックレビューの結果、有機栽培や特別栽培など複数の取組が、農地の生物多様性の保全に有効であることが分かった。次に野外調査の結果、こうした取組の多くは、収量を低下させるなど食糧生産性とトレードオフ関係にあることが分かった。しかし、その関係性には「バラつき」が非常に大きく、食糧生産性と生物多様性がどちらも高いレベルのほ場も存在していた。加えて、慣行栽培であっても生物多様性が豊かなほ場も存在していた。これらの結果は、特定の立地条件・栽培管理のもとでは、食糧生産性と生物多様性のwin-winが成立しうることを示唆している。今後、こうした仕組みを明らかにすることで、生物多様性に配慮した取組の「普及」が期待できる。ICT技術の活用によって、農地における生物調査の労力が軽減できれば、広域での大規模モニタリングが可能になり、さらなる発見をもたらしてくれるだろう。


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