| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


シンポジウム S09-4  (Presentation in Symposium)

多様性は敵か味方か?雑草管理をめぐる課題
Is biodiversity a friend or foe? Issues in weed management

*松橋彩衣子(農研機構)
*Saeko MATSUHASHI(NARO)

環境保全型農業への関心が国内外で高まる中で、雑草はその推進を妨げる要因のひとつとなっている。農地に入り込む雑草は、作物収量や品質の低下、作業効率の低下、病害虫の誘因、機械の故障といった様々な問題をもたらし、時に営農の継続や耕作放棄に関わるほどの深刻なダメージを生産現場に与える。農地は、ヒト・土・水・作業機等の移動により、常に雑草の新規侵入の危険にさらされている環境である。こうした環境の中で雑草害を防ぐためには、問題となりうる雑草を早期に発見し、適切な管理を行うことが必要となる。一方で、雑草を「農地から一掃すべき」かというと、決してそうではない。雑草が一掃された裸地では、却って侵略性の高い草種の新規侵入リスクが高まる可能性がある。それならば、作物生産を守るために、農地周辺の植生をどうやって「味方」につけていくべきだろうか。本発表では、日本の農地における雑草害の実状を照らしながら、雑草管理における課題として「早期発見」「情報共有」「植生の最適化」を挙げる。これらの課題を解決するために、ICTは、そして生態学は、どのように貢献していくことができるのか。環境保全型農業へ前進する未来を描きながら問題提起する。


日本生態学会