| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


シンポジウム S12-1  (Presentation in Symposium)

力学系モデルから個体ベースモデルを作るやり方
How to extend a dynamical models to an individual-based model

*高須夫悟(奈良女大)
*Fugo TAKASU(Nara women's university)

個体群動態の数理モデルの多くは微分方程式(力学系)で記述される。ロジスティックモデルに始まり、競争・捕食モデルなど様々なモデルが解析されている。これらのモデルは連続量としての集団サイズを取扱い、解が初期値に依存して一意に決まる決定論的モデルである。一方で、集団サイズを離散量(非負の整数値)として表現する個体群動態のモデルは必然的に確率過程となる。代表例として単純出生死亡過程(各個体が一定の率で出生と死亡を連続時間上で繰り返す確率過程)がある。集団サイズが離散量の確率過程は個体ベースの個体群動態であり、各個体に様々な属性(位置情報、年齢、感染症に関する状態など)を付与することで一般的な個体ベースモデルへの拡張が可能となる。本講演では空間個体群動態を点パターンダイナミクス(点過程)として記述するアプローチを紹介する。
点パターンのアプローチでは生物個体を点として表現する。生物集団の空間分布は点パターンとして表現され、1次構造としての点密度(点の数)、2次構造としてのペア密度(2点間の距離の分布)、3次構造(3点から成るトリプレットの大きさ・形状)・・・などで定量化可能である。
任意の力学系モデルはある手順を踏むことで個体ベースモデルに拡張できる。各個体があるルールに従い出生と死亡(そして空間上の移動)や状態変化を繰り返すモデルであり、シミュレーションは擬似乱数を生成することで容易に実行できる。これらのルールを数理的に記述する1次構造、2次構造の力学系を導出することが点パターンダイナミクスの理解の第一歩となる。シミュレーションは必要だが、なぜそうなるのか?を理解するには数理的アプローチが欠かせない。
本講演では「空間」構造に注目するが、同じ手法は齢やサイズなどの構造を持つ個体ベースモデルにも適用可能である。本講演が個体ベースモデルを用いた研究の一助になることを願うものである。


日本生態学会