| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


シンポジウム S13-2  (Presentation in Symposium)

森林の炭素貯留速度決定機構の理解に向けて
Towards understanding of factors determining forest carbon sequestration rates.

*彦坂幸毅(東北大・院・生命科学)
*Kouki HIKOSAKA(Tohoku Univ, Life Sciences)

陸域生態系は、地球全体でみると年間120 Gt以上の炭素を光合成によって吸収していると考えられている。これは人間社会による放出の20倍近い量である。ただし、陸域生態系は光合成の同化量とほぼ同量の炭素を呼吸によって失っており、収支でみると炭素の出入りはゼロに近い。しかしながら、個々の生態系を見れば、湿原のように、炭素が泥炭が蓄積し続け、長期的な炭素のシンクとしてはたらく生態系も少なくない。また、いずれ呼吸で出て行くにしても、生態系内に炭素が留まる期間が非常に長ければ、炭素のシンクとしての役割をある程度果たすかもしれない。森林の機能は、気候、地形、母材、構成樹種の影響を受けると考えられる。森林間ではどれだけ炭素蓄積速度が異なるのか、どのような森林で多くの炭素が蓄積されるのか。本研究では、国内の森林を対象とし、森林、特に森林の土壌炭素蓄積に着目し、森林間の違いを説明する要因を探索する。未解明点が多い土壌プロセスについては、放射性同位体・安定同位体・化学分析を駆使した集中的な解析を行い、個々のプロセスの速度が決まるメカニズムに迫る。気候、母材、植物形質を変数とした数理モデルを構築し、炭素貯留速度が高い森林の創造に役立てたい。本講演では、このパイロット版ともいえる湿原の炭素蓄積速度を解析した研究を紹介する。


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