| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


シンポジウム S13-5  (Presentation in Symposium)

気候変動時代の森林機能を追う
Chase the forest function in the climate change era

*熊谷朝臣(東京大学)
*Tomo'omi KUMAGAI(Tokyo Univ)

フラックスタワーで観測される生態系のCO2吸収(光合成)と放出(呼吸)は、地球の炭素循環において最も重要なプロセスである。高緯度から低緯度を縦断する多地点での生態系レベルの観測と詳細なプロセス解析は、長期・広域の生物圏機能変動の解明と予測の根幹であるとともに、人工衛星による生物圏機能の推定アルゴリズムの開発と精度向上のためにも必須である。これらの観測に加えて、生物圏機能の各プロセスと環境の因果関係のより精密な情報を得るためには野外フィールドでの操作実験が有効である。つまり、生態系間の生物圏機能及びその環境応答メカニズムの違いを理解するためには、多地点におけるフラックスタワー観測と生態系操作実験及び長期生態学調査を同所的に実施する研究サイトのネットワークを整備し、さらに人工衛星観測とのスケール統合連携を強化しなければならない。本研究では、(1)既存タワーの運用と、観測体制の再整備として、新規サイト・タワーの設立や休止タワーの再稼働を行う。現行の観測を継続しながら、順次新規観測を開始する。(2)緯度勾配に沿って設置されるコアサイトで植物・土壌の野外疑似温暖化実験、土壌物理性改変実験、降雨遮断実験、共通圃場実験などを行い、環境変化が生物圏機能に与える影響を解析する。(3)観測・実験結果を解析し、CO2吸収・放出速度の時空間分布メカニズムの知見を得る。さらに、得られたデータを用い、生態系スケールの物質循環モデルの逆計算により、生物圏機能パラメータの時系列と環境応答を得る。生物圏機能マッピング作成が本研究の目的と言えるだろう。


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