| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


シンポジウム S22-10  (Presentation in Symposium)

大規模長期生態学研究を通じた日本学術会議・マスタープランの提案
Research projects for large scale and long term ecology in Japanese Master Plan by Science Council of Japan

*中野伸一(京都大学)
*Shinichi NAKANO(Kyoto University)

人新世での急激な気候・社会変動の中での生物多様性の保全は、全世界喫緊の課題である。しかし、生物多様性の現状把握は、未だに大変困難である。例えば、我々の住むモンスーンアジアが有するアジアングリーンベルト(AGB)と呼ばれる豊かな生態系群は、世界的に重要な生物多様性ホットスポットであるが、その生物多様性の全貌は未だ不明である。京都大学生態学研究センターは、日本学術会議・基礎生物学委員会・統合生物学委員会合同の生態科学分科会からの委託を受け、JaLTERとともに日本学術会議・マスタープランの中核拠点を担ってきた。マスタープラン2020では、環境DNA、オミクス技術、バイオロギング、リモートセンシング、ドローン観測、同位体など、近年急速に発展している高時空間分解能・リアルタイム生物多様性・生物間関係性・環境質測定と、ビッグデータから因果関係を取り出す時系列解析などの解析技術を駆使し、既存の生物多様性観測を抜本的に改革する計画を策定した。本計画では、これまでに構築してきたAGB 観測ネットワークにおける高山から沿岸帯までの様々な研究サイトに生物多様性・環境質計測システムを導入し、そこで得られたデータの最先端手法による解析から、生物多様性の時空間的連動様式とそれを支える生物間・生物-環境間相互作用を世界で初めて網羅的に解明すると共に、大規模野外操作実証実験を実施することにより、生物多様性維持機構の解明から高い生物多様性を有する生態系の生態系設計へと研究を展開する。本来なら、次のマスタープラン2023に向けて、大型研究計画を策定するはずであった。ところが、昨年12月の日本学術会議幹事会では、「科学的助言機能・『提言』等の在り方の見直しについて」において、第25期の学術会議においてはマスタープランの策定は行われないこととなった。本発表では、今までの我々のマスタープランについて説明すると共に、今後の我々の対応について議論する。


日本生態学会