| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


自由集会 W10-2  (Workshop)

地上部-地下部相互作用で根を噛み切る昆虫が関係する課題を整理する
Root chewers in above- and below-ground interactions

*角田智詞(福井県立大学)
*Tomonori TSUNODA(Fukui Pref. Univ.)

植物の防衛研究やplant-soil feedbacksの研究の進展につれて、根を食べる昆虫(根食昆虫)が関連する課題にもスポットライトが当たる機会が増えた。研究数の増加を受けて行われたメタ解析では、植物に対する食害のダメージは、地上部より地下部で大きいことが示された。また、草本より木本で地下部の食害のダメージは大きかった。しかし、評価や実験の行いやすさから、これまでの研究対象は木本より草本に偏っている。このため、なぜそのような傾向が見られるかについてのメカニズムを知るためには、更なる研究の蓄積が必要だろう。さらに、自然環境中の植物は微生物と全く関係性を持たないことはないため、植物-微生物-昆虫の三者間相互作用の理解も重要である。

本講演では、野外で優占するため演者が研究対象としてきた根をかじる咀嚼性の昆虫(root chewer)を中心として、関連課題を概観する。総じると、相互作用のメカニズムを説明する生理機構(化学防御物質や天敵を誘引する揮発性物質など)まで含めて評価できる欧州や北米チームの研究が高い評価を受け、研究発展の駆動力となってきた。このため、今後の研究発展のためには、そうした技術の利用が不可欠である。また、実験材料とする昆虫の入手には海外の研究チームでも苦労が見られ、昆虫の入手のために海外まで赴いたり、ごく限られた研究材料しか扱えなかったりしている。日本では昆虫の現存量が比較的多いため、材料のハンドリングの苦労は比較的少ない。より多くの研究者がハンドリングできるように、演者が行っている草の根活動も紹介する。


日本生態学会