| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


自由集会 W17-2  (Workshop)

キャンパス設立年と周辺緑地面積の変化からみた大学緑地の現状
Current status of green spaces in Campuses characterized by the establishment year and change of green spaces in surrounding landscapes

*Tomoyo KOYANAGI(Tokyo Gakugei Univ.)

都市部では、都市公園などのまとまった面積を持つ緑地が生物多様性保全上、重要な役割を担うことが指摘されており、大学キャンパス内の緑地はその1つとして位置づけられる。また大学緑地は地域の人々に開放されているケースも多く、「地域の緑地」としても重要な役割を担っている。しかし、少子化や国立大学法人化に伴い自主的かつ戦略的な大学経営が求められる中で、財源や人材の多くが建物のマネジメントに向けられており、大学緑地の保全や活用に向けた取組は十分とは言えない。大学内だけでなく、地域との関係性も含めて大学緑地を位置づけ、保全・活用していくための長期的視点に立った方策が求められている。本研究では、明治期以降の周辺緑地面積の変遷過程に着目して、関東1都4県に位置する大学キャンパスを分類し、グループごとの緑地の残存状況や設立年との関係からその特徴を整理した。また、グループごとにいくつかの大学を事例として取り上げ、大学緑地の保全、活用の状況を把握した。分類の結果、都市型(主に23区内.明治時代から周辺が都市化)、都市化が進む校外型2タイプ(明治時代は畑優占または水田優占)、里山が残る郊外型(明治時代は森林優占)の4タイプに分けられた。郊外型の多くが1960年代~80年代にかけて設立され、特に里山が残る郊外型では1980年代に新たに設立されたキャンパスが多かった。都市型では、既に大学緑地が地域の緑地計画に位置付けられるなど、その重要性に対する認識が高かった。一方、都市化が進む郊外型では、台風による倒木被害や日照権の問題など周辺住民との軋轢が生じている事例があった一方で、ローカルコモンズとして地域住民と一緒に緑地を活用する事例もあった。里山が残る郊外型では、生態学的視点に基づく緑地保全計画が策定されるケースや、教育研究の面で積極的な活用が行われる事例もあり、今後の活動の展開が期待される。


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