| 要旨トップ | ESJ69 自由集会 一覧 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


自由集会 W23  3月18日 18:30-20:00 Room G, オンライン開催/見逃し配信対応

博物館の生態学の担い手を育てる~博物館実習と生態学~
Museum practice and Ecology - Developing human resources capable of doing ecology in museums

橋本佳延(兵庫県立人と自然の博物館), 林亮太(日本工営株式会社 中央研究所 先端研究センター)
Yoshinobu HASHIMOTO(Museumu of Nature and Human Activities, Hyogo), Ryota HAYASHI(Research & Development Center, Nippon Koei Co., Ltd.)

他の研究機関にはない博物館の社会的機能は、標本・資料を収集し、整理・保管し後世に伝える点にある。また、それらから様々な価値を取り出す調査・研究を内外で促進するとともに、多様な活用の道を探ることも求められている。この機能を発揮するために博物館に配置されている専門職が学芸員であり、学芸員には幅広い役割が期待されている。
学芸員は国家資格であり、大学での養成課程には博物館実習の必修科目として含まれている。その中でも、博物館にて現役の学芸員のもとで5日間以上の実務を経験する館園実習は、博物館の理念や設置目的、実務の概要、博物館専門職としての心構えを学ぶ上で重要視されているが、そのカリキュラムは全国で統一されたものではなく、実習生を受け入れる館園の裁量で比較的自由に設定できるため、内容は多様なものとなっている。
自然史系博物館においては、ある館では学生が研究対象とする分類群に近い標本を重点的に扱うカリキュラムを用意する一方で、専門分野を問わず様々な分類群の標本を扱うカリキュラムを用意する館もある。また、教育普及に重きを置く館では、標本の扱い以上に多世代を対象とした教育プログラムや展示の構成案の作成、市民団体との連携活動の経験などに時間を割いている。
博物館の生態学を持続的な発展を担う人材を発掘し、その成長を支援するためには、このような多様な博物館機能を(必ずしも同時に全てということではないが)発揮することと、生態学の研究活動とを両立することの大切さを伝える機会である博物館実習を有効に活用することが求められる。
そこで本自由集会では、自然史系博物館における博物館実習の内容と現状を整理し、カリキュラム内容の多様性を認めつつ、自然史系博物館ならではの生態学を発展させるために最低限共有しておきたい事柄を議論するとともに、今後、博物館実習を受講する学生たちが実習先を選ぶ際に助けとなる情報を整理したい。


日本生態学会