| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(口頭発表) C01-04  (Oral presentation)

格子モデル上での大型藻類生活環の進化
Evolution of macroalgal life cycle in lattice model

*別所和博(埼玉医科大学), Sarah P OTTO(University of British Columbia)
*Kazuhiro BESSHO(Saitama Medical University), Sarah P OTTO(University of British Columbia)

 海藻類(大型藻類)においてhaploidの配偶体とdiploidの胞子体による世代交代は広く観察される現象である。そして、この世代交代は配偶体と胞子体が両方とも巨視的な同形世代交代と片方が微視的に留まる異形世代交代に分けられる。この同形世代交代と異形世代交代という異なるタイプがなぜ進化したのかについて、高い繁殖力で空き地を効率よく占有する大型世代と、防御に徹することでパッチを長期間安定して占有できる小型世代の間のトレードオフで説明できるという仮説がある。本研究では、空き地、haploid世代が占有するパッチ、diploid世代が占有するパッチという三種類の状態を記述する格子モデルを用いることで、この仮説を検証する。
 まず、生殖細胞が無制限に分散できるため、空間構造が実質無視できる条件下でどのような進化が起こるのかを、格子モデルを平均場近似で分析することにより明らかにした。結果、繁殖力を死亡率で割った、期待繁殖成功度が進化を決めることが明らかになった。次に、この結論が格子モデル上での進化的帰結と一致するのかを計算機シミュレーションで調べた。シミュレーションでは、同形世代交代を示す野生型集団に、異形世代交代を引き起こす変異型アリルを生じさせて、それが集団に固定する確率を推定した。
 発表では、これらのシミュレーションと平均場近似による結論の比較や、分散距離に制限がある場合の進化的帰結について紹介する。


日本生態学会