| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-003  (Poster presentation)

シギ・チドリ類の国内における占有状態に関するトレンド評価【A】
Occupancy model-based assessment of trends in shorebirds in Japan【A】

*上平健太郎(国立環境研究所, 京都大学), 守屋年史(バードリサーチ), 角谷拓(国立環境研究所), 深谷肇一(国立環境研究所)
*Kentaro UEHIRA(NIES, Kyoto Univ.), Toshifumi MORIYA(Bird Research), Taku KADOYA(NIES), Keiichi FUKAYA(NIES)

 移動性の水鳥であるシギ・チドリ類は、生息地改変等の影響によりその個体数を世界的に大きく減少させている。国内では「シギ・チドリ類の個体数変動モニタリング調査」(2000 ~ 2003)および「モニタリングサイト1000」(2004 ~)などのモニタリングプログラムにおいて、100を超えるサイトでシギ・チドリ類の経時的な観測記録があり、複数の種において個体数の減少傾向が報告されている。しかし、個体数の少ない種では傾向の定量化が難しいなどの理由により、国内で約70種記録されているシギ・チドリ類の、個別の種の個体群トレンドは十分に把握されていない。
 本研究では、個体数が比較的少ない種に対しても適用可能な個体群トレンド評価枠組みとして、サイト占有率の変化に着目した方法を検討した。サイト占有率の評価においては、調査努力量の不均一性や種の一時的な不在などによる種の不検出の可能性を考慮してサイトにおける種の在・不在を推定することが重要である。そこで、上記のモニタリングデータに適合する動的マルチスケールサイト占有モデルを構築し、過去20年間の春季調査の時期におけるシギ・チドリ類計57種の占有率トレンドを解析した。
 解析の結果、シギ・チドリ類57種の占有率は、1種のみで有意な増加傾向を示し、22種で有意な減少傾向を示した。占有率の減少傾向が認められた種には、従来から個体数の減少が指摘されてきた種の大部分が含まれているのみならず、これまで個体数の増減傾向が確認されていない種も含まれていた。
 本研究では、観察される個体数が少なく従来トレンドの把握が困難であった種も解析対象とすることができた。個体数に加えてサイト占有率を指標とすることで、個体数データの乏しい幅広い分類群を対象として包括的なトレンド評価を行えると考えられる。また、モデルの下で推定された種ごとの検出特性は、より効果的なトレンド評価につながるモニタリング計画の改善に有益な情報を提供する。


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