| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-013  (Poster presentation)

自動撮影カメラによる多種同時密度推定モデル:種間相関の情報を活用する【A】
Estimating population densities of multiple species from camera trap data: utilizing species correlations.【A】

*松岡諒(東京大学), 中島啓裕(日本大学), 宮下直(東京大学)
*Ryo MATSUOKA(Tokyo Univ.), Yoshihiro NAKASHIMA(Nihon Univ.), Tadashi MIYASHITA(Tokyo Univ.)

哺乳類の個体数密度とその時空間変化,及び環境との関係を知ることは,生態学の最も基本的な課題のひとつであり,野生動物の保全・管理に不可欠である.近年の野生動物研究では自動撮影カメラの使用が一般的となり,REM(Random Encounter Model; Rowcliffe et al., 2008)やRESTモデル(Random Encounter and Staying Time model; Nakashima et al., 2018)など,自動撮影カメラによるデータに基づいた密度推定手法が確立されてきた.しかし,従来の単一種に対するモデリングでは,複数の種が同時に分布し,互いに影響を与えているという基本的な事実を見逃しており,現実に即していない可能性が高い.そこで,近年発展しつつある多種の分布推定モデル(JointSDM)の分野で用いられる構造(LVM; Latent Variable Model)をRESTモデルに導入した,「多種RESTモデル」を構築した.このモデルは,これまでは活用されていなかった種間相関の情報を新たに考慮した上での多種同時密度推定を可能とする.ただし,ここでの種間相関は必ずしも種間相互作用を表さないことに注意する必要がある.発表では,多種RESTモデルの説明とともに,シミュレーションによるモデルの性能評価と,千葉県房総半島中西部で得られた自動撮影カメラデータへの本モデルの適用の結果とその解釈を示す.さらに,本モデルの課題と今後の展望に関して議論したい.


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