| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-016  (Poster presentation)

深海トラップによる東シナ海の深海生物記録~大型等脚類オオグソクムシに焦点を当てて~【A】
Deep-sea organisms recorded in the East China Sea by deep-sea traps ~ focusing on the giant isopods Bathynomus Doederleini ~【A】

*田中章吾, 小野友梨夏, 樋渡萌, 丸山裕豊, 眞角聡, 内田淳, 青島隆, 八木光晴(長崎大学)
*Shogo TANAKA, Yurika ONO, Moe HIWATASHI, Yutaka MARUYAMA, Satoshi MASUMI, Jun UCHIDA, Takashi AOSHIMA, Mituharu YAGI(Nagasaki Univ.)

【背景】オオグソクムシ属Bathynomusは海底に降着した大型死骸に素早くたどり着き占有することが知られている。本属を含む深海性動物群は深海における炭素貯蔵やエネルギー流を考える上で重要である。また、ある種の個体群の90%が分布する水深の上限である最小出現深度(MDO)は、その種が利用する食料供給の水深を反映しており、マクロ生物学においても有益な情報である。オオグソクムシBathynomus doederleniは、北西太平洋のフィリピン・台湾・日本の深海(水深200 - 600m)に生息している。東シナ海では過去に数例報告例があるものの、言わば東シナ海の北限とされる九州南西沖合海域における本種の分布情報は極めて乏しい。本研究では、本海域で深海トラップを用いて本種の出現深度と分布様式について明らかにすることを目的とした。
【方法】 深海トラップは大陸棚斜面域の水深151 - 764mの12ステーションに仕掛けられ、カゴと筒状のものを用いた。トラップは日中沈めて、一部を除き翌日に回収した。捕獲された生物は種の同定及び各種サイズ計測を実施した。オオグソクムシのMDOは捕獲された本種の総数の90%に当たる個体数が捕獲された水深とした。本種の体長は捕獲された深度(200m台, 300m台, 500m台, 700m台)毎に区分し、体長分布を解析した。また、CPUEは捕獲した個体数を罠の設置時間と罠の個数で割ることで算出し、罠の種類間のCPUEについて深度に伴う差を明らかにした。
【結果】オオグソクムシは水深201 - 764mの地点で計475匹捕獲された。本種のMDOは312mであった。本種の体長分布は水深毎に有意な差があった(p<0.01)。体長5cm以下の個体は水深500m以深では捕獲されず、体長7 - 11㎝の個体は各深度で捕獲され、水深が深いほど平均体長が大きくなること傾向があった。全体のCPUEは水深312 - 550mで上昇した。深度に伴うトラップの種類間のCPUEに有意な差はなかった。これらの結果は、本海域はオオグソクムシが主に300 - 500mに相当数生息していることを示している。


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