| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-023  (Poster presentation)

東北地方太平洋沖地震後の岩礁潮間帯の生物群集の回復過程【A】
The recovery process of rocky intertidal community after the 2011 off the Pacific coast of Tohoku Earthquake【A】

*敷根有理紗, 岩﨑藍子(東北大浅虫)
*Alice SHIKINE, Aiko IWASAKI(Asamushi, Tohoku Univ.)

 大型地震のような大規模な攪乱の多くは稀ながら周期的に起こるため、生物群集は繰り返し劇的な変化を経験してきた。しかし発生頻度が低いことから攪乱後の群集の変化については、攪乱を乗り越え元の状態に回復するか、あるいは攪乱をきっかけに全く別の状態に移行するかもわかっていない。大規模攪乱後の生物群集の変化と帰結の将来予測には、攪乱後の群集構造の時系列変化を定量的に明らかにし、回復傾向やレジームシフトの兆候などを評価する必要がある。三陸海岸では東北地方太平洋沖地震によって津波が直撃し、数10cmの沈降が起こった。岩礁潮間帯の固着生物にとって津波と沈降はそれぞれ物理的な引きはがしや、生息環境の変化を引き起こした。しかし地震後に固着生物の種レベルの群集構造や栄養段階といった機能群レベルの構造が中長期的にどう変化したかは不明である。本研究では、東北地方太平洋沖地震後の三陸海岸の岩礁潮間帯固着生物群集の回復過程を種レベル・機能群レベルそれぞれの群集構造の変化に注目して明らかにすることを目的とした。岩手県沿岸にて地震の8年前から11年後まで毎年調査を実施し、種ごとにアバンダンスを記録した。初めに、地震後11年間の群集構造の変化の軌跡を理解するために、地震前の群集構造として種レベルでアバンダンスを地震後8年間で平均したものを求め、地震後の各年の種レベルでの群集構造と比較しそれぞれの類似度を求めた。この結果からいずれの年も類似度が低く、回復する傾向はみられなかった。次に、地震後の各年の生物群集の相対的な類似性を確かめるために、nMDS解析を用いて生物群集の種組成の類似度を確かめた。最後に、地震後11年間の群集構造の変化の軌跡を機能群レベルでも理解するために、種を機能群でまとめて地震前後の類似度の時系列変化を明らかにした。さらに、類似度の変化に対する各機能群の寄与率を理解するために、SIMPER解析を行った。


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