| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-024  (Poster presentation)

土壌生態系における微生物群集の相互作用ネットワーク動態【A】
interaction network dynamics of microbial community in soil ecosystem【A】

*景山拓矢, 東樹宏和(京都大学)
*Takuya KAGEYAMA, Hirokazu TOJU(Kyoto University)

生態系においてそれぞれの生物個体群の変動は普遍的に見られる現象である。群集内のそれぞれの生物の変動性は合成微生物群集や水圏微生物群集を対象として発展してきた。そのため、多様な生物が生息する土壌生態系を対象とした研究はほとんど行われてこなかった。そこで、我々は次世代シーケンスの技術を用いた定量シーケンスによって120日間の圃場土壌における原核生物、真菌、真菌以外の真核生物(以下真核生物)の動態をモニタリングした。そして、変動係数によってそれぞれの生物 (OTU) の変動性を評価した。さらに、反復間のアバンダンスの差と変動性の観点からそれぞれの生物の特性を明らかにすることを試みた。その結果、原核生物、真菌、真核生物全ての生物群において多くのOTUは反復間で同程度の変動性を示したが、いくつかのOTUは反復間で異なる変動性を示した。Gemmatimonadaceae (Gemmatimonadetes)、Spizellomycetaceae (Chytridiomycota)、Viridiraptoridae (Cercozoa)などのOTUが反復間で不等な変動性を示した。また、Geobacteraceae (Proteobacteria)、Sporocadaceae (Ascomycota)、Rhabdolaimidae (Nematoda)など反復間でアバンダンスの差が大きい生物が見られた。反復間で同程度の変動性を示しアバンダスの差が相対的に小さい生物は土壌生態系において安定的に生存することができると解釈することができ、Desulfuromonadales (Proteobacteria) や Cintractia (Basidiomycota) がこれに当たる。対して、Terrimonas (Bacteroidetes) や Orciraptor (Cercozoa) は大きな変動性とアバンダンスの差が見られたため、これらの生物は反復間で異なる要因によって変動が駆動されたと言える。ポスターの内容ではさらに多くの生物について変動性とアバンダンスの観点から、その生物の変動を駆動する要因について議論した。


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